2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J11405
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
水野 雄貴 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | カラビ・ヤウ多様体 / 層のモジュライ空間 / 非可換射影幾何学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度に実施した研究の成果を以下の通りである. K3曲面は2次元のカラビ・ヤウ多様体であり,その層のモジュライ空間は既約な正則シンプレクティック多様体の例を与えるため,非常に重要な対象として盛んに研究されている.一方で,非可換な次数付き代数に関しても射影多様体の類似の構成がArtin-Zhangによって与えられており,このクラスにおいても非可換射影K3曲面上の層のモジュライ空間の性質を調べることは重要な課題の一つと考えられる.しかしながら,非可換射影K3曲面の例の構成は,金沢氏よる射影空間の超曲面の非可換類似の場合のみしか,報告者の知る限りは存在しないことが一つの研究を進める上での懸念事項となっていた.報告者は2022年度,この非可換射影K3曲面,もっと一般に非可換射影カラビ・ヤウ多様体の新たな例の構成を行うことに成功した.さらに具体的に記述すると,重み付き射影空間の超曲面と射影空間の積の完全交差の非可換類似としてそれぞれの場合について,新たな非可換射影カラビ・ヤウ多様体の構成を行った.前者の結果は先に書いた先行結果の一般化となる結果となっており,後者の結果は非可換射影カラビ・ヤウ多様体の研究の新たな方向性を示唆するものとなっている.また,本結果により非可換射影K3曲面の例をより多く得られるために,将来のその上の層のモジュライ空間の研究にさらに具体性をもたらすことができる.加えて,金沢氏によって得られた3次元の非可換射影カラビ・ヤウ多様体に関してはLiuによってその上のドナルドソン・トーマス不変量の計算が試みられており,本研究で得られた結果に関してもその上のドナルドソン・トーマス不変量の計算が今後の重要な課題の一つになり得ると考えられる. 得られた研究成果は論文にまとめ,現在学術誌へ投稿中である
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多くの非可換射影カラビ・ヤウスキームの例の構成が可能になり,その後の非可換射影カラビ・ヤウスキーム上の層のモジュライ空間の研究により具体性をもたらすことができるため.
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は,以下の研究を行う. 1.非可換射影カラビ・ヤウ多様体上の層のモジュライ空間の考察.また,昨年度は中心上有限な代数を用いた構成だったが,中心上有限でない場合も例の構成が可能か調べる.特にカラビ・ヤウになるために代数にどれくらいの制約が存在するか調べる・ 2.ミラー対称性の観点からもカラビ・ヤウ多様体の研究を行う.詳しくは非可換LG-CY対応の成立が4次元重み付き射影空間の中の超曲面でも成立するか検証する.計算機などを用いた総当たり的な計算可能性ができると考えている. 3. K3曲面上のHarder-Narasimhanフィルトレーションの導来モジュライ空間から安定層の導来モジュライ空間へのラグランジュ射が構成可能であるかを検証する.
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