2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22J11470
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
吉田 眞生子 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | フィンランド / フィンランド大公国 / ロシア帝国 / 国民形成 / ナショナリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、19世紀フィンランドにおける代表的な国民的アイデンティティの構築者として位置付けられてきたサカリアス・トペーリウス(Zacharias Topelius, 1818-1898)に注目し、彼の歴史叙述における「フィンランドのフォルク」概念について検討してきた。研究途上で自治時代(1809-1917)の知識人による「フィンランド国民」概念形成は、ロシア帝国におけるフィンランド大公国の地位の擁護の論理との関係の中で検討する必要があると考え、後者に関わる史料や先行研究の調査にも時間を割いた。 得られた成果については、まず、6月21日のロシア史研究会2022年度第1回例会で「サカリアス・トペーリウスの「フィンランド国民」概念:1860 年代の議論から」という題で報告し、ロシア帝国の境界地域であったフィンランド大公国の事例について、ロシア史の研究者と共に有意義な議論を行った。続いて、8月1日に発行された『現代思想』8月号(第50巻第10号)に「研究手帖 十九世紀フィンランドにおける国民形成」を掲載した。10月1日には、2022年度早稲田大学史学会大会西洋史部会で「ロシア皇帝とフィンランド住民の「契約」:ボルゴー議会の契約説の誕生と受容」という題の研究報告を行った。ここでは、イギリス史、中・東欧史などの専門家と意見交換することができた。 年度末には、次年度に行うことが既に決定しているバルト=スカンディナヴィア研究会例会での研究報告の準備と次年度投稿予定の論文執筆を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画していた論文の投稿ができなかったため。理由としては、①研究途上で自治時代(1809-1917)の知識人による「フィンランド国民」概念形成はロシア帝国におけるフィンランド大公国の地位の擁護の論理との関係の中で検討する必要があると考え、後者に関わる史料や先行研究の調査が新たに必要になったこと、②それによって、既に読んできた史料の再検討が必要になったことが挙げられる。また、それに伴い、当初は複数の人物に等しく注目して研究を進めることを計画していたが、トペーリウスを軸にしつつ他の知識人の議論にも目配りする方針に変更した。 ただし、論文の投稿はできなかったが、2度の研究報告を通じて多くの研究者と有意義な議論をすることができ、次年度の研究の進展が見込める状態である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、自治時代(1809-1917)の知識人による「フィンランド国民」概念形成を、ロシア帝国におけるフィンランド大公国の地位の擁護の論理との関係の中で検討していく。また、当初は複数の人物に等しく注目して研究を進めることを計画していたが、トペーリウスを軸にしつつ他の知識人の議論にも目配りする方針を取る。
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Remarks |
吉田眞生子「研究手帖 十九世紀フィンランドにおける国民形成」『現代思想』8月号(第50巻第10号)、2022年、230頁
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