2022 Fiscal Year Annual Research Report
内陸アジア遊牧民の商取引ネットワーク:清代ハルハ=モンゴルの駐屯地を例に
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22J12017
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
谷川 春菜 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | モンゴル / ハルハ / 駐屯地 / 取引 / ネットワーク / 貨幣 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、17世紀末から20世紀初頭にかけて清の統治下にあったハルハ=モンゴル地域の駐屯地(軍営、駅站、哨所)を対象として、中央ユーラシア遊牧民が行った取引の実態、及び彼らが構築していた取引のネットワークの解明を目指すものである。今年度は、研究指導委託の制度を利用し、モンゴル国立大学の研究員としてウランバートル市に滞在し、モンゴル国立中央文書館に通って所蔵史料を調査した。まず、駐屯地における貨幣使用や商人の出身地、取引される商品の種類を網羅的に調べ、その後18世紀末のフレー(現ウランバートル市の前身)においてモンゴル人官員らが作成した帳簿群に分析対象をしぼり、その結果、当時の貨幣使用状況の特質、とくに茶が「信用貨幣」として使用されていたことを明らかにすることができた。この成果は、日本モンゴル学会大会において発表した(「清朝統治下ハルハ=モンゴルの貨幣―18世紀末フレーにおける銀と茶」(2022年11月19日、於鹿児島大学)。 また、研究指導委託先の大学院生を対象に、講演「Манжийн еийн Халхын арилжаа наймааны онцлог(清朝統治下ハルハにおける商取引の特質)」(2022年10月12日、モンゴル国立大学大学院人文学部歴史学科合同ゼミ)も行い、研究に役立つ情報の交換に努めた。 加えて、下記の講演やコラム執筆にも取り組み、日本で暮らす人々を対象に、前近代遊牧民の歴史や文化、現代モンゴル事情に関する普及活動を行い、遊牧地域の人々とのより良い関係の構築をサポートすることを試みた。 ・講演「ウランバートル都市のくらし」2022年8月24日JICA地球ひろばオンラインセミナー「2022年モンゴル最前線へオンライントラベル!遊牧民のくらしと都市のくらし」 ・コラム「もっと!天幕のジャードゥーガル」毎月連載、Webサイト「Souffle」秋田書店
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モンゴル国立中央文書館に通って調査を進め、成果を学会で報告することができた。中国北京市の中国第一歴史档案館や、ロシアのロシアの国立イルクーツク州文書館(フォンド番号24)と同国ウラン=ウデ市の国立ブリヤート共和国文書館における調査は、中国の感染症防疫対策やロシアにおける戦争の影響に鑑み実施を見送ったものの、各館の所蔵史料のうち史料集として公刊された部分を活用し研究を進めた。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
日本モンゴル学会大会で報告した内容を論文の形でまとめ、学術雑誌に投稿する。2022年度に引き続きモンゴル国立中央文書館に通って研究を進め、国内外の学会、学術誌での発表を目指す。また、中国の感染症防疫対策やロシアにおける戦争の影響の状況を注視し、可能であれば両国の公文書館を訪問して史料調査を行う。
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