2022 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of the double chemotaxis model with the effect of fluid
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22J12100
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
武内 太貴 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | Keller-Segel方程式系 / Navier-Stokes方程式系 / 斉次Besov空間 / 時間大域解 / 平滑化効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績においては、流体の影響を考慮した走化性方程式系であるKeller-Segel-Navier-Stokes方程式系のうち簡略化された方程式系を考察した。具体的にはKeller-Segel方程式系のうち第2方程式がPoisson方程式で与えられるものを扱った。まず初めに簡略化された方程式系における結果を得ることで、目的とする二重走化性のモデルへの応用を考察する。 一般次元の全空間上で本方程式系を考察し、まず2次元以上のスケール不変な斉次Besov空間上の初期値に対する強解の一意存在定理を得た。特に、その強解は時間変数に関してLorentz空間に属し、さらに時間変数および空間変数に関して無限階微分可能であることを示した。また、初期値が十分小さい場合は対応する強解が時間大域的に存在し、さらに解は初期値の空間と同じ位相で減衰するという結果を得た。これは、単独のNavier-Stokes方程式系におけるKozono-Okada-Shimizu (2020)の一部の結果と対応した結果と考えられる。 一方で、本方程式系の解の非粘性極限に関する問題を考察した。具体的には、初めに3次元以上のSobolev空間に属する初期値を与え、対応する時間局所解の一意存在定理を得た。なお、流体の粘性項には正定数である粘性係数を考慮しているため、解の存在時刻は粘性係数に依存して変化する。この問題に関して、粘性係数に依存しないアプリオリ評価を導出することで、解の存在時刻が一様に選べることを示した。さらに、対応する解の非粘性極限が初期値と同じ位相で収束するという結果を得た。この結果は類似の方程式系におけるZhang (2016)の結果の改良とみなすことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の対象とする方程式系は二重走化性のモデルの解析であるが、現状では得られた結果は簡略化された方程式系の結果に留まっている。なお、従来の方程式系における非線形項には細胞密度による項と化学物質濃度による項の積が含まれており、この非線形項の評価を特異性の高い斉次Besov空間において考察することは容易ではない。 また、非粘性極限を考察した問題では、簡略化されたモデルにおいても時間局所的な解の存在定理しか得られていない。これは、本結果において3次元以上という仮定を必要とすることが原因である。粘性を無視したEuler方程式系における可解性は半群論などの放物型の理論が適用できないため、初期値が小さい場合であっても時間大域解が得られるかどうかは定かではない。一方で2次元における結果を得ることができれば、その解が時間大域的に存在することが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた結果を従来のKeller-Segel-Navier-Stokes方程式系や二重走化性モデルに応用できるか検討する。場合によっては非線形項が修正されたモデルを考察することや、斉次Besov空間ではなくLorentz空間などを用いることで困難点を解消する。 非粘性極限の問題に関しては、2次元の場合でも類似の結果が得られるかを検証する。初期値の関数空間を斉次型の空間に変えることで評価時に生ずる困難点を解消できることが予想されるが、以前の結果における評価も適宜修正する必要がある点に留意する。特に2次元の場合では時間大域解の存在が期待できるため、新たなアプリオリ評価の導出による証明を考察する。 また、最近精力的に研究されている非線形境界条件を持つKeller-Segel-Navier-Stokes方程式系に関して考察する。この場合は全空間ではなく一般の領域として考察する必要があるため、対応する線形理論も大きく異なる。場合によっては一般の領域における新たな線形理論を関数解析的観点から考察することも視野に入れる。
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