2022 Fiscal Year Annual Research Report
専門内容を英語で討論する能力の発達過程の解明:EMIでの困難克服分析より
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22J12685
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Research Fellow |
清田 顕子 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 英語による専門科目授業 / 第二言語社会化 / 排除 / 不快感 / 感情 / 教室内ディスカッション |
Outline of Annual Research Achievements |
専門内容の第二言語討論能力の発達プロセス解明のために、本研究はEMIにおける困難克服分析を中心に進めた。特に2022年度は、学習者の困難さにフォーカスし、以下3点を明らかにした。 (1)排除がどのように共同構築されるか。テンポの速いやりとりや視線などのジェスチャーが、相対的な英語力が低い受講生のディスカッションへの参加を阻害していることがわかった。分析結果から、双方に誤解があることが明らかになり、排除が意図せずに共同構築されていたことが示唆された。 (2)どのような不快な感情が生じるか。焦点者全員が,不安,恥ずかしさ,疎外感,劣等感などの様々な感情を複合的かつ多層的に経験していた。1人の焦点者は,不安と恥ずかしさ,劣等感から授業を欠席する寸前で持ちこたえる経験をしていた。また,これら苦痛となる感情に対し,我慢型か対応型の2つの対処パターンが見られた。対応型では,苦痛となる感情が学びへの行動を触発していた。これらのことから,不安以外の感情も着目に値することを指摘した。 (3)耐え難い苦痛はどのような事態を招くか。一定の英語力を持ちながらも、EMIの授業において心理的困難を抱える受講生1名に着目し、一学期間密着してデータを収集した。毎週の振り返り日誌、授業観察、2回のインタビューなど複数のデータソースから、この受講生は耐え難い苦痛を経験しており、EMIの授業を欠席する寸前であったことが分かった。彼女の抱えていた問題は、言語的問題のみに由来するものではなく、彼女が置かれた社会的文脈や教室内実践によっても形成されていることを明らかにした。本論文の結果は、EMIプログラムを通して育っていく萌芽的バイリンガルの第二言語社会化過程における経験について、新たな理解を加えるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学習者の困難さにフォーカスした本年度の研究は上記の3点を明らかにすることができ、論文と国際学会を含む複数の学会発表において成果の発表をすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は困難さについて明らかにした。次年度は、この困難を克服していく過程に着目し、2年間のタイムスパンにおける焦点参加者のインタラクションの力の伸びを分析し、記述していく。
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