2023 Fiscal Year Annual Research Report
グリア細胞-乳がん細胞間相互作用に着目したがん増殖機構の解明
Project/Area Number |
22KJ2943
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
黒岩 由佳 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 乳がん / 脳転移 / 遺伝子発現解析 / グリア細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
乳がんは予後良好ながん種であるが、脳へ転移した場合は予後不良となる。一般に、脳転移の診断時には既にがん細胞が脳で顕著な増殖を遂げている。このことから、我々は脳へ転移した後のがん増殖機構を解明することが脳転移の治療法開発に重要だと考え、脳局所での腫瘍増殖に着目した研究を行ってきた。これまでに、9種類の乳がん細胞株をマウスの脳組織中へ移植することにより脳での増殖能を比較評価し、特に増殖が顕著な2株を同定した。また、移植前(in vitro)の遺伝子発現解析から、これらの細胞株で特徴的に発現する遺伝子群を特定した(Kuroiwa et al., 2020)。このうち、患者の予後との相関性が認められた一部の遺伝子についてはノックダウンにより脳での増殖への寄与を評価したが、増殖への影響は認められなかった。この結果を踏まえ、我々はがん細胞の遺伝子発現がin vitroとin vivoで異なる可能性を想定した。そこで2023年度は、実際の脳微小環境(in vivo)で増殖に寄与する遺伝子の同定を目指し、がん細胞を移植した脳または乳腺全体からRNAを回収し、がん細胞(ヒト遺伝子)と移植先組織(マウス遺伝子)の遺伝子発現を分けて解析した。その結果、脳で増殖中のがん細胞では、乳腺で増殖中のがん細胞に比べてグリア細胞発生に関与する遺伝子が発現上昇し、インターフェロンシグナルに関与する遺伝子が発現低下していた。また、がん細胞を移植した脳組織では、がん細胞を移植していない脳組織に比べて免疫系プロセスの負の制御に関する遺伝子が発現低下していた。さらに、脳切片の免疫染色から、腫瘍周囲にはアストロサイトおよびミクログリアが集積することが明らかになった。これは、がん細胞がグリア細胞との相互作用の下、免疫関連シグナルを変化させることにより増殖することを示唆する結果である。以上をまとめ、現在論文執筆中である。
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