2022 Fiscal Year Annual Research Report
計時に対して変動をもたらす要因と機構の実験的解明:連合学習との接続を目指して
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22J20401
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
胡 テイ 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 計時 / ラット / 習慣 / 低価値化 / 条件づけ / 学習 / インターバルタイミング |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトを含む動物は周囲の様々な手がかりを基に、事象間の関係から有用な情報を抽出し、行動を制御しながら環境に適応している。その中でも特に重要な情報は、時間に関するものである。特定の外的刺激に後続して、あるいは自発的な行動の結果として、どのような価値の出来事が起きるかを予測することができたとしても、それが「いつ」起きるのかを予測できなければ、適応的な意味を持たない。したがって、生物学的に重要な出来事がいつ起こるのか、手に入るのかを予測することは、学習という現象において極めて根本的であり、同時に適応的な観点からも動物にとって必須の能力である。生活体が「いつ」「何が」起きるのかを予測すること、それに応じて適応的に変容させることは、その心理学的な内的過程及び神経メカニズムを明らかにすることは、学習という過程を理解する上で不可欠である。
こうした背景を受けて本年度の研究は、道具的行動の結果事象の時間表象と価値表象を取り扱い、2つの表象が独立であるかを明らかにすることを目的とした実験を行なった。具体的に、ピーク法を用いて安定した計時行動を形成したのちに、強化子低価値化手続きを通じて結果事象の価値を低下させ、その際に計時と反応強度が独立に影響を受けるか、あるいは同時に影響を受けるかを検証した。その結果、結果の時間表象と結果の価値表象との独立性を見出し、目的的過程における計時の特徴と習慣過程における計時の特徴を明らかにした。これまで、「学習の中身」の問題に関して、学習理論研究は強化子低価値化手続きを用いて、S-S連合或いはR-O連合に関する精緻な検証を行なわれている。道具的行動の連合構造について多くの重要な知見が蓄積されてきたが、計時行動の連合過程に対する言及や検証を行われていなかった。ゆえにこれらの研究結果は計時行動の内的過程の理解に新たな知見を提供した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定は道具的行動の内的過程と計時との関係を明らかにし、計時に主観的な揺らぎをもたらすメカニズムの一端を解明することであった。本研究は十分な行動データが蓄積され、以下のような知見を得られた。明瞭なピークを形成した道具的条件づけ事態においては結果の価値表象を伴わないのに対して、逆に行動の目的性を保たれていた実験事態においては明確な時間表象が欠けていることを見出すことできた。つまり、時間と価値の行動制御という観点からは、計時場面における行動の強い時間制御は、価値による行動の制御を隠蔽する可能性がある。これにより、結果事象の時間表象と価値表象が乖離しており、独立に処理されている結論に導いた。現段階では、昨年度の研究成果をまとめ、論文化に向けて原稿を作成している段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は主に2つのことに従事する。1)昨年度の研究を論文としてまとめて投稿する。2)本研究は当初、動物の計時に影響与える3つの要因の検証を計画している。昨年度は計時行動を制御する内的な過程の検証を行い、十分なデータを得たため、本年度は報酬予測誤差が主観的時間知覚に与える影響を検討し、新たな実験を遂行する。
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