2022 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本における対立と格差の階層政治論に関する計量社会学的研究
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22J00250
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
桑名 祐樹 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(PD) (90976812)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 政治参加 / 政治社会学 / 社会階層論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、新型コロナウイルス感染症による影響を受け、事業開始が2023年1月まで後ろ倒しになった。そのような中であっても、成果を上げることができた。 まず、当概年度は、研究を立ち上げるにあたっての種々の整備やデータの入手、データのクリーニングや加工、そして分析までの一連の作業行程を急ぎで行った。加えて、分析に至るまでの理論的な枠組みについても、基礎的な部分の構築に着手した。具体的には、西欧における政治社会学で議論・検討が行われている新しい政治的対立についての理論的な整理と、日本社会を説明する上での妥当性の検討を中心に行った。 その結果として、次のような結果を得られた。個々人の階層的地位が投票参加/棄権と結びつく一方で、政党選択には大きく影響しないことが明らかになった。かつ、政党選択には西欧と同様に経済的対立と文化的対立の双方にかかわる社会意識が影響していることが明らかになった。具体的には、自民党への投票行動には再分配や福祉に対する否定的立場が影響している一方で、主要野党である立憲民主党は再分配や福祉に対する社会意識は規定要因として統計的に有意な影響があるとは確認されなかった。このような結果を受けて、日本における政党間競争と階層的地位の関係について議論を行った。この研究成果については、日本数理社会学会における報告として発表したものである。当該研究成果の意義は、階層的地位の多寡が、55年体制後に変容した日本の政党間競争の中において、どのような意味を持っているかを、包括的かつ実証的に示した点にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、事業開始が2023年1月であったため、わずか3ヶ月の期間しかなかった。ただし、そのような短期間でも、学会発表を行うことができた。そのため、短期間で特別研究員としての課題を急速に前進させることができたと評価することができる。この学会発表では、研究計画の根幹となる「対立と格差の階層政治」という枠組みに対しての試論と実証的な適用の双方を試みた。この研究内容は次年度における論文投稿の基盤となる内容であったが、参加者とのディスカッションによって、想定以上に議論を深めることに成功した。特に、仮説・分析枠組に対するコメントや実証的な方法についてのコメントは、今後論文化するにあたって極めて重要な点であった。そのため、学会終了後、直ちにこうした点をブラッシュアップして、論文化の作業を前進させることもできた。このように、年初から年度末にかけての極めて短い期間ではあったものの、業績を積み上げるという点だけでなく、更なる研究成果へとつなげる準備を万全としたという点では、研究が順調に進展していると言えるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策として、学会発表で得たコメント等を反映させて、さらなるアウトプットとして発表していくことが挙げられる。具体的には、社会学の査読付専門雑誌に投稿することを目指す。最終年度、あるいはその翌年までに掲載されるスケジュールで今後は進めていくこととする。 また、新たなデータを創出および分析についても、必要に応じて進めていくことが求められるであろう。そのため、適切なデータ取得方法についても検討していく。それだけでなく、調査が必要になった場合には、他の研究者との連携も必要になる可能性がある。そのために、他の政治社会学者からの助言や彼らの参画も含めた検討を進めていくこととする。
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