2022 Fiscal Year Annual Research Report
イヌはどのようにヒト集団へ入ったのか:内分泌変化に基づく新奇物への反応から
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22J23933
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Azabu University |
Principal Investigator |
篠田 公美 麻布大学, 獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | イヌ / 家畜化 / 探索 / 新奇恐怖 / 機能的等価性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の目標は、イヌの家畜化でどのような行動形質が選択されてきたのか調べる研究1のデータを取り終えることと、他種集団に馴染むことのできたイヌが、新奇な刺激群についてどのように学習するか調べる研究2について、予備データを取得することであった。 研究1に関しては、西洋近代犬種群と、遺伝的にオオカミに近い日本古代犬種群を用いた実験が終了した。この実験は、強化子を信号する既知刺激と新奇刺激の犬種群による選好を比較するものであった。西洋犬が強く搾取的な反応をする一方で、日本犬は新奇刺激にも反応する傾向にあるという、イヌの家畜化過程での形質変化に関する示唆的な結果を得た。 研究2については、恣意的な刺激カテゴリ内で機能的等価性が成立するかどうか、日本古代犬種と西洋近代犬種で比較することを目標としている。したがって、その検証方法である認知課題が遂行できるよう、実験方法の確立から始めた。まず、遠隔操作によってイヌに給餌できる装置を本研究費を用いて導入し、予備実験を複数回実施した。本研究計画では、視覚刺激呈示後にイヌが特定の場所まで移動すれば反応が起こったと見なし、食餌によって強化する方法を予定していた。しかしながら、この方法では、イヌが一度の反応に要するコストが大きく、多くの試行数を必要とする実験フェイズをすべて遂行するのに膨大な時間がかかるという問題が判明した。したがって、イヌの反応形態をよりコストの小さなものに変更するため、液晶画面に映った視覚刺激に触れた際反応として自動記録し、その位置で即時強化できるような装置を考案、製作することとした。この過程で自動食餌呈示装置が必要となったが、既存のものは小型げっ歯類用の小さな餌しか呈示できなかったため、本研究費を用い、イヌ用のものを特注した。本年度は、研究1の論文化を進めつつ、研究2で用いる装置の作製を引き続きおこなう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1では、日本古代犬種および西洋近代犬種の十分な個体数についてデータを収集することができた。研究2については、予備実験を実施したことにより、当初計画していた方法が改善を要することが判明したが、新たな装置を考案するなどの形で、適切な実験系確立に向け、研究を進めることができた。したがって、本研究計画は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究2を実施するため、視覚刺激に対するイヌの反応の検出、その自動記録および食餌呈示による強化といった一連の動作をおこなう装置の製作を進める。当該装置を用いた手続きで、昨年度に引き続き予備的データを収集する。この際、イヌの反応形態として、鼻などで液晶ディスプレイに接触させることを予定しているが、装置への恐怖や接触過敏などの理由から、狙った反応形成がなされにくいことも十分に考えられる。その場合は、赤外線センサーを用いて反応を記録するなど、イヌにとって反応コストの小さなものに変更する予定である。実験方法が確立した暁には、日本古代犬種および西洋近代犬種を用いた実験を開始する。具体的には、機能的等価性の成立について検証する方法として、恣意的見本合わせ課題を実施することを予定している。
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