2022 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンライチョウの味覚・解毒機能の高山環境適応機構の解明と保全に向けた飼料開発
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22J40064
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
橋戸 南美 中部大学, 応用生物学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2022-10-03 – 2026-03-31
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Keywords | ライチョウ / 味覚 / 苦味受容体 / 腸内細菌 / 解毒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、高山植物を採食するニホンライチョウを対象に、毒性成分を検出する苦味感覚の解明、腸内細菌による解毒機能の解明を行う。これらの知見をもとに、ニホンライチョウの飼育飼料の改善、ニホンライチョウの生息域外保全へ貢献することを目的としている。また味覚機能については近縁種との比較も行うことで、ライチョウ亜科が高山環境に適応した進化的背景を味覚の観点から考察する。 10月より本研究を開始し、本年度は苦味受容体遺伝子の配列解析を中心に行った。ライチョウに近縁なキジ目のニワトリでは3種、シチメンチョウでは4種の苦味受容体遺伝子を持つことが報告されている。これらの遺伝子を候補配列として、ライチョウを含むキジ目約20種のゲノム配列に対して遺伝子相同性検索を行い、各種における苦味受容体遺伝子レパートリーを決定した。各遺伝子に対して系統樹を作成したところ、系統樹の枝長に違いが見られ、各苦味受容体間では異なる進化傾向を示していることが示唆された。 ライチョウおよびキジ目の羽根試料を動物園から提供して頂き、羽軸から抽出したDNAを用いて、各苦味受容体遺伝子の配列解析を行った。本解析では、個体に負担の少ない非侵襲的試料である羽根を用い、羽軸1本から遺伝子配列解析を行う実験系を確立した。ライチョウでは苦味受容体遺伝子に高い種内多様性が見られ、種内で苦味感覚が多様化している可能性が示唆された。その他に、キジ目6種の苦味受容体遺伝子配列を決定した。今後は遺伝子増幅産物を用いて発現ベクターを作成し、苦味受容体機能解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度10月より本研究を開始したため、本課題に関する研究発表等は行ってないが、本年度の苦味受容体遺伝子解析から興味深い結果が得られたため、次年度より詳細な分析を行うことが可能となった。また鳥類の羽根1本より遺伝子配列解析を行うことができたため、今後の遺伝子解析を行う上での条件を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた苦味受容体遺伝子増幅産物を用いて発現ベクターを作成し、苦味受容体の機能解析を行う。またライチョウ採食植物中に含まれる苦み成分を調べ、その物質を用いた機能解析を行う。腸内細菌解析についても試料が得られ次第、進めていく予定である。
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