2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22KJ2986
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Nagahama Institute of Bio-Science and Technology |
Principal Investigator |
富原 壮真 長浜バイオ大学, バイオサイエンス研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | メダカ近縁種 / タイメダカ / 性行動 / スニーカー行動 / 全ゲノム解析 / 性染色体 / 第二次性徴 |
Outline of Annual Research Achievements |
雌雄の性を持つ動物種は、多くの場合メスがオスを配偶者として選好するため、オスの第二次性徴や性行動パターンはメスに選好されやすい形質へ進化する傾向にある。この一方で、一定の割合でメスによる選好に不利なオスが有利なオスを出し抜いて性行動を行う「スニーカー個体」が見られる。しかし、このスニーカー個体が出現する遺伝学的なメカニズムは明らかになっていない。このため本研究では、スニーカー個体が頻繁にみられるメダカ近縁種のタイメダカを用いてこのメカニズムを明らかにすることを目的とした。 昨年度までの研究で、タイメダカ オス個体の中に一定の割合でオス型の第二次性徴が不明瞭になるスニーカー個体が出現することを示した。種々のゲノム解析を行うため、PacBio HiFi read、Hi-C readなどを用いてde novo assemblyを行いタイメダカのassembled genomeを構築した。その結果、scaffold数161本からなるassembled genomeを得た。このgenomeの合計長は836 Mbp, N50は73 Mbpとなり、BUSCO scoreは98%を超える値となった。さらに、染色体レベルにassembleされたscaffoldはタイメダカの染色体数と同じ14本となった。このように、高精度に全ゲノムの構築に成功した。 このgenomeにタイメダカ雌雄それぞれのゲノムをプールしたshort-readをマッピングし、X/Yハプロタイプの構造の差異を検出したところ、Y特異的に60 kbの挿入配列が存在すること、この配列の中に性決定遺伝子が存在することが示唆された。タイメダカ オスでスニーカー個体が出現することから、その原因となるゲノム領域がY染色体に存在する可能性が考えられる。今後は特にこのY染色体に着目し、スニーカー個体が出現する遺伝学的メカニズムを解析する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
スニーカー個体が出現する遺伝学的メカニズムを明らかにするために、タイメダカ オスの第二次性徴である尻鰭の伸長度合に相関するゲノム領域を探索するゲノムワイド関連解析(GWAS)を計画していた。しかし、このGWASには高精度のリファレンスゲノムを要するため、de novo assemblyによるassembled genomeの構築を先に行う必要があった。これを行うための種々の次世代シーケンサーによるシーケンシング解析や、コンピューターによるde novo assemblyやpooled genomeのマッピングによるY染色体構造の解析を行ったため、GWASの解析が遅れた。 また、スニーカー個体の出現は血中の雄性ステロイドホルモンの濃度の違いに起因することが考えられるが、タイメダカは体が非常に小さく、ELISAによってステロイドホルモン量を検出することが困難であることが予想された。このため、現在までに血中の雄性ステロイドホルモン動態とスニーカー個体出現の関係を明らかにするに至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
進捗状況に示した通り、昨年度までに高精度のassembled genomeが構築できており、現在GWAS解析のための個体を維持した状態である。今年度はGWAS解析を行い、スニーカー個体を生み出すゲノム領域やその構造を明らかにする。 また、ELISAによってステロイドホルモン量を検出することが困難であるため、今後は質量分析法によるステロイドホルモンの解析に切り替える予定である。
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Causes of Carryover |
進捗状況に示した通り、当該年度はコンピューターによるデータ解析が主になり、ゲノム解析や種々の実験に用いる試薬や消耗品を購入することがなかった。また、昨年10月より所属機関である長浜バイオ大学の雇用PDとなったことによる学術条件整備費用が追加となったため、次年度使用額が生じた。 次年度では、ゲノム解析や質量分析に用いる試薬やシーケンシング費用に加え、学術条件整備費用としても使用する予定である。
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Research Products
(4 results)