2022 Fiscal Year Annual Research Report
圧密が磁気特性に与える影響の研究 -古地磁気学とテクトニクスの新展開に向けて-
Project/Area Number |
22J01436
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Research Fellow |
神谷 奈々 京都大学, 工学研究科, 助教
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 圧密 / 岩石磁気 / 堆積軟岩 |
Outline of Annual Research Achievements |
圧密により磁気特性がどのように変化するかを明らかにするために,圧密試験と岩石磁気測定を組み合わせた実験を行った.房総半島前弧海盆にて採取した泥質岩ブロックから円柱形の供試体を作製し,これまでの研究で構築した圧密試験用圧密容器を用いて圧密試験を実施した.圧密試験の前後で初磁化率の異方性(AMS)と非履歴性残留磁化(ARM)を測定したほか,試料に含まれる磁性鉱物の特徴を把握するために振動試料磁力計(VSM)を用いて測定を行い,ヒステリシス曲線を得た.ステレオネットを用いて,初磁化率の最大軸,中間軸,最小軸の方位について解析を行ったところ,今回用いた試料では,供試体の最小軸が圧密方向と平行に配列し,最大および中間軸が圧密方向と直交する平面内に分布が確認された.この配列は,圧密実験の前および後の両方で確認された.また,AMSの測定結果を用いて作成したフリン図によると,本供試体では圧密試験後に面構造の発達度合いが増加している様子が確認された.本供試体に対するARM測定結果からは,圧密方向に直交する平面内で残留磁化が増加することが判明した.本結果は,フリン図が示す面構造の発達度合いが増加したことと整合的である.本供試体と同一層準の試料が示すヒステリシス曲線は,強磁性鉱物の寄与が大きいことを示しているため,今回明らかとなった圧密後のARMの増加が,磁性鉱物の回転を示している可能性が高い.今後は,圧密による磁性鉱物の回転の様子を定量的に捉えるために供試体の数を増やして圧密実験を行い,また保磁力の大きい磁性鉱物に対する圧密の影響を確認するために,等温残留磁化(IRM)測定を追加実施する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
堆積軟岩である泥質岩を圧密し,その前後で岩石磁気測定を行う本実験の行程では,手順の異なる2つの試験・測定を組み合わせているため,それぞれのプロセスにおける制約に起因する技術的な課題もあったものの,新たな装置を作製するなど課題を解決し,実験方法を確立するに至った.これまでの実験では,軸方向の応力が試験機の最大値になるように設定して実験を行った.複数の測定にて整合的な結果が得られていることから,確立した実験方法により供試体の数を増やして実験を進めている状況である.天然での圧密について議論するために,間隙率や粒子の配列方向など,用いる試料の構造にバリエーションを持たせて実験を進めている状況であり,概ね順調と評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,確認された圧密による磁性鉱物の回転の様子を定量的に捉えるために,確立した実験手法によって,試料数および供試体数を増やして,引き続き実験を行う.また,保磁力の大きい磁性鉱物に対する圧密の影響を確認するために,等温残留磁化(IRM)測定を実施する.その上で,圧密量に対する磁性鉱物の回転度合いを定量的に評価するために,圧密量を変化させた時の磁気異方性についても検討を試みる.さらに,天然での圧密現象を踏まえた両者の関係を議論するために,天然の地質体における岩石の異方性を考慮した解析を実施し,褶曲など地質構造を考慮した圧密と磁気方位の関係について検討する.
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