2022 Fiscal Year Annual Research Report
シナプス小胞エンドサイトーシスにおける液-液相分離現象の役割解明
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22J20370
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
吉田 知史 同志社大学, 脳科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | シナプス伝達 / シナプス小胞クラスター / エンドサイトーシス / エンドフィリン / 液-液相分離 / 脳・神経 / タンパク質 / 神経細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、持続的な神経伝達を達成するために必要な現象であるシナプス小胞のエンドサイトーシスがタンパク質の液-液相分離によって制御されているのかを検証し、神経伝達時のタンパク質の動態制御機構を明らかにすることを研究目標としている。2022年度は、シナプス小胞エンドサイトーシスタンパク質であるEndophilin A1 (EndoA1)がシナプス前終末で考えられる濃度の範疇で液-液相分離を引き起こすことをスクリーニングによって発見した。この結果よりEndoA1液-液相分離のシナプス内での性質に注目した実験を組み立てた。まず、COS7細胞にEndoA1を過剰発現させ、液滴を形成することを確認した。また、この実験系からEndoA1に結合するタンパク質がEndoA1液滴に格納されること、さらに、synaptophysinとsynapsin1を共発現させ、シナプス小胞クラスターを模倣した環境(Park et al, 2021, Nat.Commun.)でEndoA1によってエンドサイトーシス関連タンパク質が模倣したシナプス小胞クラスターとともに液滴の状態で存在することがわかった。次に、初代培養神経細胞を用いてEndoA1の局在、および動態を解析した結果、EndoA1はシナプス小胞クラスターと同じ空間で液-液相分離し、神経活動に応じてシナプス前終末で拡散、集積を繰り返していることがわかった。これらの結果より、シナプス小胞のエンドサイトーシスに関与するEndoA1がシナプス小胞クラスターと同じ空間で動的な液-液相分離構造体を形成し、神経伝達を維持している可能性を提唱でき、現在、これらの結果をまとめた学術論文を国際誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、シナプス小胞のエンドサイトーシスに関与するタンパク質の中から液-液相分離を引き起こすタンパク質を同定し、シナプス前終末でエンドサイトーシス関連タンパク質の液-液相分離がどのような性質を保持しているのかを明らかにすることができ、現在これらの結果をまとめた学術論文を国際誌へ投稿しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度に引き続き、シナプス小胞のエンドサイトーシスにおける液-液相分離現象の役割をさらに解明するとともにエンドサイトーシスタンパク質の液滴と共存するシナプス小胞クラスターの分子基盤も解明することによって、研究課題をより詳細に理解することに努める。シナプス小胞クラスターはsynapsin 1による液-液相分離がシナプス小胞に存在する豊富な酸性脂質を認識することによって形成されていることが報告されているが、シナプス小胞がなぜ酸性脂質を豊富に有しているかは不明瞭である。2023年度はこの疑問を解決することによってシナプス小胞の脂質組成がsynapsin 1の液-液相分離環境に影響を与えるか否か、さらには申請者が提唱するエンドサイトーシス関連タンパク質による液-液相分離環境にも影響を与えるか今後検討していきたい。
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