2022 Fiscal Year Annual Research Report
プログラマブル・マター:シートのソフトな変形と摩擦から創発する機能やそのデザイン
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21J22837
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
吉田 圭介 立命館大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 弾性薄膜 / パターン / 機能 / しわ / 折り畳み |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目は、接触や重力がシートに誘起するパターンを理解するために、大きく分けて次の2つの研究を行なった。1つは、やわらかい弾性基盤の上にシートを置き、上から剛体棒で圧縮するという問題についてである。単純な設定ではあるが、シートの変形は曲面の幾何学に束縛されているために、本研究課題で目標としていたシートを狭い空間に拘束するという複雑な設定と強く関連した変形が引き起こされる。圧縮荷重を見積るスケーリング則や、圧縮に伴いシートに発生するしわパターンがスナップ転移的に遷移していくことを明らかにし、それらについて日本物理学会2022年秋季大会で報告した。もう1つは、摩擦がある剛体基盤上に置いたシートを点荷重で鉛直上向きに引っ張り上げていく問題についてである。実験により、シートにはたらく典型的な弾性力に比べて重力が無視できないとき、重力と弾性力(伸縮、あるいは曲げのモード)が競合することで、興味深いパターン遷移が見られることが確認された。この現象について、従来行なってきた荷重測定に加え、新たにレーザー変位計を用いた形状測定を実施し、理論予測で得られたスケーリング則と実験結果がよく一致することを確認した。この結果は日本物理学会2023年春季大会で報告しており、国際雑誌への論文投稿の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目にあたる今年度は、シートと外界の接触相互作用によって特徴的な形態形成や力学応答が現れるような基本モデルを確立し、実験と弾性体力学の理論に基づくスケーリング議論を組み合わせることで新しい成果を上げることができた。昨年度から問題となっていた、薄板の大変形を記述する偏微分方程式の詳細な解析や、数値シミュレーション方法についても改善策が固まりつつあり、新しい結果も出始めている。以上の進捗状況をまとめると、全体として、おおむね順調に進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、まず、これまでに得られた実験結果やスケーリング則を補完するような数値計算や解析計算を実施し、様々なスケールや環境で、体積力や接触作用によって生じるパターンの形成メカニズムを統一的に理解する普遍的理論を明らかにする。また、パターン遷移の際に見られるスナップ転移などの特徴的な力学応答について深く理解し、それらをロボティクスやメカニカルメタマテリアルに機能として付加できないかを検討する。また、シートが大変形した際の複雑な折り畳み過程についても折り紙工学の視点を取り入れながら明らかにしていきたいと考えている。
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