2022 Fiscal Year Annual Research Report
運動による心血管疾患の発症リスク低下にマイオカイン:irisinが及ぼす影響
Project/Area Number |
21J23418
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
井上 健一郎 立命館大学, スポーツ健康科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | irisin / 有酸素性トレーニング / アテローム性動脈硬化 / 肥満 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までに我々は肥満者の習慣的な有酸素性運動によるNO産生を介した動脈硬化度の低下には運動誘発性マイオカインであるirisinが関与することを明らかにした。しかしながら、心血管疾患において血管閉塞が起こる冠状動脈や脳動脈のアテローム性動脈硬化発症リスクに対する運動効果の機序にirisinが関与するかは明らかでない。本研究では、肥満を伴いアテローム性動脈硬化を発症するモデル動物を用いて、有酸素性トレーニングにより分泌増大したirisinがアテローム性動脈硬化リスクの低下に関与するか否か、さらにその分子機序を明らかにすることを目的とした。 今年度は、有酸素性トレーニングによるirisin分泌の促進がアテローム性動脈硬化を改善する機序を検討した。ApoE欠損マウスにおいて、アセチルコリン(ACh)による血管内皮依存性の血管拡張機能は有意に低下するが、有酸素性トレーニングにより有意に改善された。一方で、ニトロプルシドナトリウム(SNP)による血管内皮非依存性の血管拡張機能は変化が認められなかった。冠状動脈と同様に脂肪が沈着しアテローム性動脈硬化を呈することが確認できた大動脈を代替として用いて、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)タンパク発現を検討した。ApoE欠損マウスにおいてeNOSタンパク発現は有意に低下したが、有酸素性トレーニングにより有意に増大した。さらに、血中irisin濃度とeNOSタンパク発現は有意な相関関係を示した。これらの結果から、有酸素性トレーニングによるirisin分泌の促進がアテローム性動脈硬化を改善する機序には、血管内皮機能の改善が関連する可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有酸素性トレーニングによるirisin分泌の促進が、アテローム性動脈硬化の抑制に関与すること、さらにその機序には、血管内皮機能の改善が関与することを明らかにした。おおむね順調に研究を進められていると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果として、有酸素性トレーニングによるirisin分泌変動が血管内皮機能の改善を介して、血管内の脂肪沈着の抑制効果と関連する可能性が示唆された。この結果を基に、次年度は有酸素性トレーニングによって骨格筋におけるirisin分泌が促進する機序や、irisinが脳動脈のアテローム性動脈硬化の抑制に与える影響を検討する予定である。
|
Research Products
(11 results)