2022 Fiscal Year Annual Research Report
骨格筋機能と全身性カルシウム代謝との相互作用メカニズムの解明
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22J15582
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
森 理紗子 立命館大学, 食マネジメント研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | ビタミンD / カルシウム / 骨格筋 / 運動器機能 / 骨格筋機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
ビタミンD作用は運動器機能の維持や向上に寄与することが疫学的調査研究により明らかにされている。しかしながら、筋局所でのビタミンD作用がどのような作用機序で運動器機能を維持するのか、また、ビタミンD作用は筋細胞機能に直接影響するかについては明確でない。本研究は、筋組織でのビタミンD作用をとらえるとともに、筋組織の発達や運動機能を維持する仕組みを明らかにすることを目的とする。 本年度は、筋特異的にCreリコンビナーゼを発現するマウスとビタミンD受容体(VDR)floxマウスの交配により骨格筋特異的にビタミンD作用を欠失したモニターマウス(筋VDRKO)を作出し、表現型解析を行なった。その結果、筋局所でビタミンD作用が運動器機能やを失うと、自発運動量が減少し、骨密度や骨量が低下することを明らかにした。ただし、筋量や筋線維横断面積などの組織学的な変化は認められなかった。 筋VDRKOマウスの解析から、筋局所のビタミンD作用は筋機能の維持に重要であることが示唆されたため、C2C12筋細胞を用いてビタミンDの直接的な作用を検討した。C2C12筋細胞への活性型ビタミンD[1,25(OH)2D3]刺激は、筋細胞内のATP/ADP比を低下させた。そこで、ATP代謝(放出、分解)に関与する因子について検討を行ったところ、ATPを細胞外へ放出するコネキシン43のタンパク質発現量は1,25(OH)2D3刺激により増加した。さらに、ATPを分解しピロリン酸を生成するENPP1の発現量が増加し、細胞外液中のピロリン酸濃度も同様に増加した。ピロリン酸はリン酸カルシウム結晶の生成の阻害により、骨や軟組織の石灰化を抑制する。このことから、ビタミンD作用は筋細胞局所でATPの放出と分解を促進し、細胞外液中のピロリン酸濃度を高めることで筋組織へのカルシウム蓄積を抑制し、運動器機能維持にはたらくことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度に実施を予定していた筋VDRKOマウスを用いた運動器機能に関する表現型解析と培養細胞を用いたビタミンD作用の重要性の明確化については概ね達成された。しかしながら、ビタミンD作用が筋機能を維持する具体的な仕組みを解明するには至っていない。このことから、進捗状況を「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の検討により、ビタミンD作用は筋細胞局所でATPからピロリン酸の生成を促進し、筋組織へのカルシウム蓄積を抑制することで、筋組織の柔軟性を維持することが示唆された。そこで次年度は、C2C12筋細胞を用いた実験により、ビタミンD作用による筋組織の石灰化抑制の仕組みやこの仕組みが機能する生理条件を見極める。
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