2023 Fiscal Year Research-status Report
量子ドット-有機分子配列構造に基づく新規光捕集系の構築
Project/Area Number |
22KJ3058
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
久保 直輝 関西学院大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 量子ドット / 超分子集合体 / 自己集合 / エネルギー移動 / 電子移動 / 有機無機ハイブリッド |
Outline of Annual Research Achievements |
量子ドットが有する優れた光捕集能を活かすことで、太陽電池、光検出器などの光電子デバイスの高効率化に繋がる。しかし、デバイスで重要となる固体状態では、光捕集によって生成した励起子が固体内を拡散中に消滅してしまう。本研究の目的は、量子ドットの層と有機分子集合体の層がナノメートルレベルで交互に並んだ配列構造を構築することで、量子ドット層で生成した励起子が消滅する前に、有機分子層へのエネルギー移動・電子移動を誘起することである。この目的を達成するために、本年度は、「配列構造内でのエネルギー移動」に関して、以下の研究項目を遂行した。 1.量子ドットから有機分子集合体へのエネルギー移動の評価 集合した有機分子は、モノマーとは大きく異なる光物性を示すため、配列構造内でのエネルギー移動の評価が複雑化する可能性がある。そこでまず、孤立した量子ドット(NC: ペロブスカイト型CsPbBr3ナノ結晶)に対し、モノマー、および集合したペリレンビスイミド誘導体(PBI)を吸着させ、集合状態の違いがNC-PBI間エネルギー移動に与える影響を調査した。発光スペクトル測定、および発光減衰曲線測定の結果、NCからのエネルギー移動によるPBIの発光量子収率が、集合することで著しく低下することを明らかにした。さらに、PBIに導入するNCへの吸着基の数を変えることで、NC表面でのPBIの集合状態を変化可能であることを明らかにした。 2.NC-PBI配列構造内でのエネルギー移動の評価 前年度で構築した配列構造、および分離構造におけるNC-PBI間のエネルギー移動を、顕微分光法を用いて単一NC-PBI共集合体レベルで評価した。発光減衰曲線測定の結果、共集合体内でのNCからPBIへの高効率なエネルギー移動を確認した。さらに、配列構造においてより効率良くエネルギー移動が誘起されることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、本年度は配列構造内でのエネルギー移動の評価に取り組んだ。当該年度の前半では、量子ドットに吸着した際の有機分子の集合状態の違いがNC-PBI間エネルギー移動に大きく影響することを明らかにした。これは、有機分子集合体を鋳型として形成する量子ドット-有機分子配列構造内におけるエネルギー移動を理解する上で非常に重要な知見となった。この成果は、すでに学会誌に発表済みである。当該年度の後半では、顕微分光法を用いることで、前年度で構築した配列構造、および分離構造におけるNC-PBI間のエネルギー移動の評価に成功した。さらに、そのエネルギー移動効率は、配列構造において特に高効率であることを明らかにした。これは、目的とした配列構造が期待通りの機能を有することを示しており、次年度以降のさらなる進展が期待できる。この成果は、すでに論文を投稿済みである。以上より、本年度の研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
量子ドット-有機分子配列構造におけるエネルギー移動の評価に成功したため、今後は当初の計画通り、配列構造内での電子移動の評価に取り組む。量子ドット-有機分子間の距離を短くすることで、電子移動が起こると期待される。そこで、アルキル鎖の短いPBIを合成し、用いることで新たな配列構造の構築を試みる。この際、アルキル鎖を短くすることでPBIの溶解性が著しく低下し、配列構造の形成に重要なナノサイズの集合体が得ることが難しくなると予想される。初年度において、量子ドットへの吸着部位としてカルボキシ基を導入したPBIが、カルボキシ基同士の水素結合を駆動力として自己集合することを明らかにした。そこで本年度はまず、吸着部位をピリジル基にすることで、自己集合特性をわずかに抑制した新たなPBIの合成に取り組む。その後、集合体の作製条件(溶媒や濃度)の検討により、アルキル鎖が短いナノサイズのPBI集合体を形成させ、電子移動可能なNC-PBI配列構造を構築する。得られた配列構造について、発光寿命測定、および過渡吸収測定を行うことで、配列構造内での電子移動を評価する。
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Causes of Carryover |
予定していた試薬や旅費にかかる費用が安く済んだため、次年度使用額が生じた。次年度に新たな有機分子を合成するため、その試薬代に充てる予定である。
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