2021 Fiscal Year Annual Research Report
超新星残骸の衝撃波加速のエネルギー分配測定で解明する銀河系への宇宙線供給
Project/Area Number |
21J00031
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
鈴木 寛大 甲南大学, 自然科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 超新星残骸 / 粒子加速 / 宇宙線 / 宇宙X線観測 / 装置開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主題は超新星残骸での宇宙線加速・宇宙空間への供給が100 kyrほどのタイムスケールでどのように進化するかである。この研究のため、まず超新星残骸の年齢を定量化する必要があり、主として2020年度に行ったこの解析結果を査読論文として公開した。2020年度に執筆した自身の博士論文の主な結果について、本年度により物理的に適切なアプローチで再解析をし、査読論文として公開した。また、超新星残骸の観測によく用いられるX線衛星Chandraの検出器バックグラウンドの空間的・時間的な特性を徹底的に調べ上げ、各観測データに対応する尤もらしいバックグラウンドスペクトルを生成するツールを作りあげた。この結果も査読論文として公開した。 粒子加速の時間発展の平均的なトレンドだけでなく、粒子加速の素過程にアプローチするため、加速された粒子自身と加速環境の両方がよく観測できる超新星残骸RCW 86をターゲットとし、空間分解X線解析を行った。結果、プラズマ密度に相関して加速電子のエネルギー量や最高加速エネルギーが変化することが判明し、単純な衝撃波加速モデルではなく、密度が不均一な分子雲と衝撃波の衝突による加速効率の変化で定性的に理解できた。この結果は査読論文として投稿し、現在再投稿準備中である。 2022年度中に日本から打ち上げ予定のX線衛星XRISMプロジェクトに参加し、主に軌道上運用コマンドの作成・管理・検証、地上試験の手順書作成・検証、各種衛星試験への参加を行っている。 ガンマ線望遠鏡H.E.S.S.のチームへ加入し、習熟の目的も兼ねてニュートリノ源と見られる天体のTeV帯域ガンマ線放射の解析を行い、放射エネルギー量の上限値を測定した。また、ガンマ線衛星Fermiを用いて超新星残骸の解析を進めている。超新星残骸W51Cから広がった放射を確認し、周辺に拡散しつつある加速粒子を捉えていると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国外はもちろん国内出張も制限がかかっている中で、研究内容の拡張には苦労している。特に、当初予定していたガンマ線望遠鏡H.E.S.S.を用いた超新星残骸の研究については、ドイツにあるH.E.S.S.チームの本拠地に赴いて研究の立ち上げを行う予定だったが、本年度は不可能であった。しかし、その代わりにX線データの解析を新たに開始しつつ、昨年度から続けてきた研究成果を査読論文や学会発表の形で一つひとつまとめることができた。 装置開発の面では、当初予定していたCMOSセンサ実験の立ち上げは遅れているものの、現在のタイミングでより重要と考えているXRISM衛星プロジェクトに大きな貢献ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
装置開発面では、打ち上げ直前であるXRISM衛星の衛星試験が連続して予定されており、その準備や試験への参加に大きな労力を割くことが見込まれる。データ解析の面では、H.E.S.S.とFermiを用いたガンマ線帯域の研究に力を注ぎつつ、国内外の研究者との対話を通じて研究対象を広げていきたい。
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Research Products
(14 results)