2021 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の低温馴化の神経回路における「ぶり返し時間差反応」の光遺伝学解析
Project/Area Number |
21J20026
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
本村 晴佳 甲南大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 線虫 / C. elegans / 神経回路 / 温度馴化 / 神経伝達物質 / 光遺伝学的 |
Outline of Annual Research Achievements |
温度変化は生物の生存・繁栄に密接に関わる。線虫Caenorhabditis elegansでは温度変化への応答として温度馴化現象がみられる。C. elegansは25℃飼育後に2℃に置くと死滅するが、25℃飼育後に15℃を3時間以上経験すると2℃でも生存できるようになる。この温度馴化現象を指標に温度応答の神経回路の解析を進めたところ、頭部の感覚ニューロンと尾部の介在ニューロン、そして頭部の介在ニューロンで構成される神経回路が温度馴化の促進に寄与することが示唆された。温度刺激下で上流の温度受容ニューロンから下流の介在ニューロンに実際に情報伝達が行われているのかを、ニューロンの細胞体内カルシウムイオン濃度の増減を指標に解析した。温度受容ニューロンの温度応答性が低下している変異体を用いた尾部介在ニューロンのカルシウムイメージングにより、温度刺激時に尾部介在ニューロンの神経活動が低下する変異体を見つけた。その変異体の温度応答性を細胞特異的に回復させることで、尾部の介在ニューロンに温度情報伝達を行う頭部の温度受容ニューロンを同定した。最近見つかったASG温度受容ニューロンに関して、ASGの温度受容に異常をもつ変異体deg-1を用いて、温度馴化に関わる尾部の介在ニューロンの活動をカルシウムイメージングで測定した。その結果、deg-1変異体では、温度刺激に応じた尾部の介在ニューロンの活動が野生株よりもやや上昇しているように見えたが、統計的には野生株と有意差はなかった。さらに、チャネルロドプシン(Chrimson)を用いてASGや尾部の介在ニューロンの活動を操作することを試みたが、Chrimsonを活性化させても神経活動の変化が見られなかった。一方で、温度馴化に関わる神経伝達物質の変異体を解析したところ、いくつかの変異体で温度馴化の異常が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ASGの温度受容に異常をもつ変異体のカルシウムイメージング解析では、温度刺激に応じた尾部の介在ニューロンの活動は、統計的には野生株と有意差はなく、Chrimsonを用いたASGの活動を操作でも神経活動の変化が見られなかったが、一方で、温度馴化に関わる神経伝達物質の変異体を解析したところ、いくつかの変異体で温度馴化の異常が見られたため、全体的には研究は進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 低温馴化の神経回路におけるニューロ ンにおいて、例えば温度受容ニューロンなどの神経活動が低下している変異体を用いて、その下流の介在ニューロ ンの神経活動をCa2+イメージングで解析する。この解析から、低温馴化において頭部の温度受 容ニューロンと尾部の介在ニューロンを介する神経回路の関係性を明らかにする。 2. 前年度までの解析から見つかってきた、低温馴化に異常が見られた神経伝達物質やその受容体の変異体をもちいて、温度刺激を与えた際の低温馴化の神経回 路のCa2+イメージングを行い、低温馴化の神経回路における神経伝達物質と神経活動制御の分 子機構を分子的な側面から探る。
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