2022 Fiscal Year Annual Research Report
植物の排水組織を介した物質分泌機構とその生理学的意義の解明
Project/Area Number |
22J00425
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
八木 宏樹 甲南大学, 自然科学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 溢泌 / 排水組織 / シロイヌナズナ / 物質分泌 / オミクス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
維管束植物は排水組織から液体 (溢泌液と呼ぶ) を排出する.溢泌液には種々のタンパク質や二次代謝物が含まれることが知られている一方で,それらの物質を体外に排出する生理学的な意義やメカニズムはほとんど解明されていない.本研究ではシロイヌナズナの排水組織が有す溢泌液の成分調整機構を理解することを目的としている.2022年度はタンパク質および生体イオンに着目し,網羅的同定 (オミクス解析) を実施した. 1) これまでに行ってきたRNA-seq解析により,排水組織高発現遺伝子の多くが分泌タンパク質をコードしていることが分かった.これらのタンパク質は排水組織で合成され,アポプラスト領域に分泌された後,溢泌液の成分として体外に排出されることが予想される.以上を検証するため,分泌性GFPを利用したモデル系実験を行った.また,シロイヌナズナの溢泌液について液体クロマトグラフィ質量分析によるプロテオーム解析を実施した. 2) 排水組織ではいくつかのトランスポーター遺伝子が特徴的な発現を示す.これらのトランスポーターが溢泌液中の生体分子成分の濃度調整に関与していると予想される.本解析では誘導結合プラズマ質量分析により,溢泌液のイオノーム解析 (元素濃度解析) を試みた.その結果,野生型シロイヌナズナの溢泌液からLi, Mg, Caなど十種以上の元素が検出され,特に重量比ではCaが占める割合が多いことが判明した.ただし,実験系における感度などの問題点も明らかになってきた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は溢泌液についての2つのアプローチから成分同定を実施できた.特にプロテオーム解析については公開済みのRNA-seqデータと整合性のある結果を得られた.その一方,イオノーム解析については実験系を改良する必要性も出てきたところである.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から排水組織には溢泌液中のタンパク質をコントロールする機能があることが示唆された.今後は特定の分泌タンパク質に着目し,蛍光タグを利用したトラッキングや植物体外における生理機能解明を進めていく.溢泌液イオノーム解析については実験系を見直し,野生型植物における環境要因を念頭に置いて実験を進めていく.
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[Presentation] ゼニゴケの細胞核光定位運動におけるキネシン様タンパク質MpKACの機能的役割2023
Author(s)
岩渕功誠, 八木宏樹, 沖奈那夏, 横畑伶奈, 中田亜紗美, 広本沙耶, 小松愛乃, 酒井友希, 高木慎吾, 西浜竜一, 河内孝之, 渡辺洋平, 上田晴子, 西村いくこ
Organizer
第64回日本植物生理学会年会
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