2022 Fiscal Year Annual Research Report
筋形成における亜鉛シグナルの役割解明: -筋関連疾患の再生医療と創薬を目指して-
Project/Area Number |
21J40212
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tokushima Bunri University |
Research Fellow |
吉開 会美 徳島文理大学, 薬学部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 筋損傷 / 微量元素 / 亜鉛 / 筋形成 / 亜鉛トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、骨格筋における亜鉛シグナルの役割と筋疾患との関連を解明する。 骨格筋は、体内総亜鉛の60%を保有し、生体の運動機能を担う主要な組織であり、健康寿命に大きく関わっている。細胞内における亜鉛の恒常性維持は、膜輸送タンパク質である亜鉛トランスポーターによって制御され、輸送される亜鉛は、亜鉛シグナルとして標的分子に作用し、種々の生理機能や疾患に作用する。近年、老化に伴う生体の亜鉛量の減少と加齢性疾患との関わりが明らかとなりつつあるが、骨格筋における亜鉛の役割については不明である。本研究では、Zip13-KOマウスを用いて、ZIP13が制御する骨格筋形成や再生に関わるメカニズムを解析した。 これまでの研究において、Zip13-KOマウスは野生型と比較して筋力低下を示すこと、また骨格筋を採取して筋分化関連遺伝子の発現を検討したところ、Zip13-KOマウスにおけるPax7遺伝子、MyoD遺伝子の発現量は、野生型と比較して低下していることが確認された。そこで、Zip13をshRNAによりノックダウンしたマウス筋芽細胞株C2C12細胞を作成し分化能を評価したところ、コントロールと比較して筋管細胞への分化能が顕著に低下していたことから、筋分化過程においてZIP13は重要な役割を果たしていることが示された。 次に、筋再生過程にZIP13がどのように関わっているかを、塩化バリウムを腓腹筋に筋注し筋障害を引き起こすin vivo病態モデルをZip13-KOマウスに適用して検討した。塩化バリウム投与後のZip13-KOマウスにおける筋損傷の程度を筋組織のHE染色で評価したところ、野生型と比較して同程度での筋損傷を確認した。一方で、回復過程においては、塩化バリウム投与後10日においても顆粒球の浸潤が確認されたことから、野生型と比較してZip13-KOマウスでは回復が遅延していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Zip13の欠損が、骨格筋において筋分化関連遺伝子の発現低下、および骨格筋の再生過程において回復遅延をもたらすことが明らかとなった。今後は、骨格筋の幹細胞である、筋サテライト細胞に着目して研究を展開していく。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究によって、Zip13遺伝子をノックダウンしたC2C12細胞株を用いた研究によって、筋サテライト細胞が骨格筋へと分化する過程において、ZIP13が重要な役割を果たしていることが示された。特に、Zip13-GFP-KIマウスの骨格筋を用いた検討においては、筋サテライト細胞にZIP13が発現していることを確認し、また筋サテライト細胞におけるZIP13の亜鉛シグナルが、ZIP13自体の発現制御に関わることが示唆された。さらにZip13-KOマウスに筋損傷モデルを適用した病態モデルによる検討においては、野生型マウスと比較してZip13-KOマウスの筋損傷はその回復が遅延することが示唆された。以上のことから、ZIP13は筋サテライト細胞および筋繊維に発現して、骨格筋の分化や維持のみならず、骨格筋の回復過程においても重要な役割を有していることが示唆された。 現在、上記を含む研究結果をまとめ、論文投稿準備を進めている。
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[Journal Article] Possible involvement of zinc transporter ZIP13 in myogenic differentiation2024
Author(s)
Shoji Masaki, Ohashi Takuto, Nagase Saki, Yuri Haato, Ichihashi Kenta, Takagishi Teruhisa, Nagata Yuji, Nomura Yuki, Fukunaka Ayako, Kenjou Sae, Miyake Hatsuna, Hara Takafumi, Yoshigai Emi, Fujitani Yoshio, Sakurai Hidetoshi, dos Santos HG, Fukada Toshiyuki, Kuzuhara Takashi
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 14
Pages: 8052
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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