2023 Fiscal Year Annual Research Report
ハイブリッドリポソームを用いた造腫瘍性細胞の排除に関する研究
Project/Area Number |
22KJ3071
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Sojo University |
Principal Investigator |
陳野 莉子 崇城大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 再生医療 / 造腫瘍性 / 安全性 / 品質管理 / ハイブリッドリポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
再生医療では、移植細胞中に混在した未分化細胞や悪性形質転換細胞等の造腫瘍性細胞により、腫瘍形成のリスクが生じる。本研究では、本学で開発されたハイブリッドリポソーム(HL)が造腫瘍性細胞の細胞膜流動性を認識する物理学的特性を利用し、同細胞の選択的排除を目的とした。 最終年度となるR5年度は、iPS細胞由来肝細胞と肝がん細胞の共培養による悪性度の高い肝がん細胞の選択的排除について検討した。予備試験として、正常ヒト胎児肝細胞(Hc細胞)と肝がん細胞(HuH-7細胞)が混在した状況におけるHLの選択的造腫瘍性細胞の排除を観察した。両細胞が混在する場合でもHLが細胞膜流動性の大きなHuH-7細胞に優先的に融合蓄積することが示された。また、Hc細胞とHuH-7細胞の混合培養において、HLはHc細胞を残存させながらHuH-7細胞を選択的に排除することが共焦点レーザー顕微鏡観察とフローサイトメトリー解析により示された。細胞の造腫瘍性試験である軟寒天コロニー形成試験では、HL処理によって足場非依存的増殖能を有するHuH-7細胞が排除されていることが確認され、HLは正常細胞中に混在する形質転換細胞を選択的に排除できることが示された。これらの結果に関しては、筆頭著者として論文にまとめ、Cytotechnology誌(査読付き)に研究成果を報告した。 本研究では、初年度となるR4年度に、HLによる未分化細胞の排除を評価するため、分化度の低いiPS由来肝芽細胞と未分化iPS細胞の排除を検討しており、HLが未分化iPS細胞を選択的に排除できる可能性を示している。上記2年間の研究期間全体を通じて、HLの細胞膜流動性を認識する物理学的特性を利用し、HLが造腫瘍性細胞である形質転換細胞と未分化iPS細胞を選択的に排除することを示し、HLが再生医療等製品の品質管理技術として応用できる可能性を示した。
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