2023 Fiscal Year Research-status Report
Importin13により制御される細胞内のSUMO化分配調節機構の解明
Project/Area Number |
22KJ3072
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kumamoto Health Science University |
Principal Investigator |
山口 泰華 熊本保健科学大学, 保健科学部, 特別研究員(RPD)
|
Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
|
Keywords | Importin13 / 生殖細胞 / Ubc9 |
Outline of Annual Research Achievements |
Ipo13(Importin13)トランスポーターはタンパク分子同士の複合体を形成せず、単独で細胞質と核の物質輸送を行なう。そのカーゴ分子の一つUbc9は、SUMO conjugating enzymeとして知られている。タンパク質がSUMO化されると、タンパク質の品質管理や細胞内局在の変化、他のタンパク質との複合体形成等が誘導されることで、種々のタンパク質の生理活性機能が調節されると考えられている。これらのタンパク質の生理活性機能の調節を通して、細胞分化や分裂が調節されると考えられているが、その全容は明らかになっていない。 我々はこれまでに、Ipo13トランスポーターが生殖細胞の発生時期特異的に発現上昇することを明らかにした。Ipo13は単独で細胞質と核の物質輸送を行なうため、その時期特異的発現上昇に応じて、カーゴ分子の輸送が行なわれると考えられた。そして、この発現上昇が生殖細胞特異的にSUMO化酵素のUbc9細胞内局在化を誘導することを明らかにした。そこで、Ipo13およびUbc9を含めたそのカーゴ分子の機能解明を計画した。 方法としては、まず誘導型Ipo13KOマウスをもちいて、目標1 Ipo13による細胞機能の制御機構を解明する。次いで、Ubc9を介したSUMO化タンパク質誘導制御とその生理活性に着目して、目標2 SUMO化されるタンパク質の細胞機能を制御する作用機序を解明する。さらに、目標3 精巣特異的に発現する抑制型Ipo13の発現に着目して、Ipo13そのものの輸送活性の制御機構を解明する。以上よりIpo13による細胞分化制御機構を明らかにする。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は、将来の生殖巣に生殖細胞が集積する11日目胚以降においてIpo13が必要であるかを調べるために、将来の生殖巣に生殖細胞が集積する11日目にてタモキシフェンを投与してその後の生殖細胞の観察を行なった。すると、卵巣において減数分裂が開始する13日目胚、ならびに減数分裂の進んだ15日目胚の卵巣において生殖細胞は有意に減少した。しかし、同時期の精巣においては有意な影響は観察されなかった。このことから、RPD R4年度のけっかと合わせて、Ipo13の働きは、卵子と精子の双方において減数分裂期の生殖細胞の生存に必須であることが明らかになった。 Ipo13のカーゴ分子である Ubc9のfloxedマウスの作成を完了し、タモキシフェン投与によりCreリコンビネースの核移行が誘導される全身性Rosa-Cre-ERT2マウスと生殖細胞特異的Ddx4-Creマウスを用いて解析をスタートした。
|
Strategy for Future Research Activity |
育児と遺伝子組み換えマウスの管理と研究推進を両立することが非常に困難であったが、今年度からは、熊本大学の動物実験施設にて経験を積み、実験動物の扱いに熟知している技術補佐員が管理を徹底してくれる予定である。Ipo13やUbc9のfloxedマウス、それらの遺伝子欠失誘導のためのCreマウスと蛍光のレポーターマウスなど遺伝子組み換え動物の管理全般を任すことができるので、本研究課題の実験に集中して解析を行なう。
|
Causes of Carryover |
遺伝子組み換えマウスの管理を任すことができる技術補佐員を探していたが十分な能力のある人材が確保できないでいた。しかし、今年度の終わりになって、熊本大学の動物実験施設にて経験を積み、実験動物の扱いに熟知している技術補佐員が遺伝子組み換えマウスの管理を徹底してくれる手筈となった。そのため次年度には、技術補佐員への謝金と実験に必要な器具類の購入のための使用額が生じた。これにより、研究者本人は本研究課題の実験に集中して解析を行なうことができる。
|