2022 Fiscal Year Annual Research Report
Fabrication of a highly selective photocatalyst for methane conversion by controlling photocatalyst surface structures combined with operando spectroscopy
Project/Area Number |
22J01398
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
斎藤 晃 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 光触媒 / 金属助触媒 / メタン / 水 / オペランド計測 / 赤外吸収分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
光触媒によるメタン酸化では酸化剤の反応性が光触媒の反応活性や選択性に重要な役割を果たす。本研究では酸化剤として水を用いるが、水分子はその吸着状態や水素結合環境によって反応性が変化する。そこで、光触媒表面における水分子種について詳細な文献調査を行い、その知見をまとめて総説とした。この総説を通して、水分子の吸着状態や水素結合環境といった微視的な分子の物性が反応メカニズムや素反応に大きく影響することやこれらを制御するために光触媒表面設計が重要であることを示した。 また、水によるメタン酸化の表面反応メカニズムと光触媒活性や選択性との関係性を明らかにするために、メタン酸化の代表的な光触媒である酸化ガリウムに金属助触媒を担持したモデル反応系に対してオペランド赤外吸収分光を行った。まず、水の同位体を用いた分子ラベリングによって、光触媒表面で活性化された水分子種を介したメタンのC-H結合の活性化経路が発現し、メタン酸化活性が劇的に向上することを明らかにした。また、反応活性のメタン圧力依存性の速度論解析と光触媒表面のメタン酸化中間体種の観測を組合せることで、金属助触媒による反応選択性の違いが金属助触媒表面での中間体種のキネティクスの違いによるものであることを明らかにした。 以上のように、本年度ではメタン酸化のモデル光触媒系に対してオペランド赤外吸収分光を行うことで、吸着水分子によってメタン活性化が促進されること、活性化されたメタン由来の中間体キネティクスが金属助触媒によって変調されることで反応選択性が変化することを分子論的に明らかした。これらのモデル光触媒系におけるメタン酸化の微視的な知見は、今後、様々な光触媒系における表面素反応や中間体キネティクスと反応活性や選択性との関係を考える上での基礎となるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究を通して、金属助触媒を担持した酸化ガリウムというメタン酸化のモデル光触媒系において、同位体を用いた分子ラベリングや反応活性の速度論的解析を組み合わせたオペランド赤外吸収分光が反応に直接関与する活性種や活性サイトの情報を得ることに対して強力な手法であることを実証できた。また、本手法を適用することで得られた上述の新奇な知見は、表面反応の微視的なメカニズムの違いが光触媒の活性や選択性の違いとして発現することを裏付けており、光触媒表面でのメタン酸化反応の制御に向けて表面反応メカニズムに基づいた光触媒表面の設計が重要という本研究コンセプトの有用性を実験的に示すことができた。以上の経緯から本研究は順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で得られた知見をさらに深めるため、オペランド赤外吸収分光に加えてオペランド可視吸収分光による活性な光誘起正孔の観測を行い、モデル光触媒系におけるメタン酸化反応の描像を微視的に明らかにしていく。その後、可視光応答光触媒を含む様々な光触媒系に対して、これまでに確立したオペランド分光計測を適用することで、メタンを効率的に高付加価値な化合物へと転換するために必要な光触媒表面の設計指針を明らかにしていく。
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