2023 Fiscal Year Research-status Report
Fabrication of a highly selective photocatalyst for methane conversion by controlling photocatalyst surface structures combined with quasi-steady state operando spectroscopy
Project/Area Number |
22KJ3098
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
斎藤 晃 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | 光触媒 / メタン / 水 / 赤外吸収分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度では、昨年度に引き続き、水を酸化剤とした光触媒メタン酸化反応系におけるオペランド分光に取り組んだ。特に、メタン酸化における代表的な光触媒である酸化ガリウムにおいて、白金やパラジウムといった金属助触媒によって酸化反応の選択性が変化することについて、赤外吸収分光による反応中の表面中間体の観測と反応活性のメタン圧力依存性の速度論的解析から分子レベルでのメカニズムを提案した。また、従来は電子を蓄積する還元反応場として考えられてきた金属助触媒が正孔を蓄積する酸化反応場としても機能するという新たな光触媒の描像を打ち出した。この光触媒の新たな描像はメタン酸化を制御する上で重要な触媒設計の指針となる。 また、上記の研究を行う中で、メタンの有無が表面吸着水の反応性を大きく変調することを見出した。具体的には、水だけが存在する場合に比べて、メタンと水が共存する反応雰囲気では、水分解反応が顕著に促進されるという新奇現象を発見した。メタンの代わりに希ガスや他の低級アルカンを添加した場合では、このような水分解の促進は確認されなかった。そこで、赤外吸収分光によって表面吸着水を観測した結果、メタンの有無によって表面吸着水の水素結合ネットワーク構造が異なること、すなわち、メタンが表面吸着水の水素結合環境に影響を及ぼすことが明らかとなった。本研究で見出した「メタンと表面吸着水における非自明な相互作用によって表面吸着水の反応性が向上する」という知見は、光触媒の表面と吸着分子種を含めた界面システムの理解とそれに基づく界面設計によって更なる触媒性能を引き出せる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究を通して、半導体光触媒に担持する金属助触媒がメタンの酸化反応場として機能し、その反応選択性を制御する重要な要素であることが反応メカニズムベースで明らかとなった。これまで光触媒材料の探索が手探りで行われてきたことに対して、本研究での知見は光触媒メタン酸化における戦略的な触媒設計指針となり得る。また、メタンの酸化剤として機能する光触媒の表面吸着水分子の反応性がメタンと水の非自明な相互作用によって変調されることも見出しており、光触媒材料だけでなく共存する反応物を含めた反応系をデザインすることが目的反応の促進において重要となることが示唆された。このように、本年度の研究を通して得られた分子論的な知見は、従来の材料科学的な光触媒研究では見出せていなかった新たな視点をもたらすことができたと考えている。よって、本研究は順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度で得られた光触媒による酸化反応の知見をさらに深めるため、オペランド可視吸収分光や軟X線吸収分光による光誘起正孔の観測を行うことを計画している。特に、金属助触媒による反応選択性の違いやメタン有無における表面吸着水の反応性の違いが生成物ベースで観測されている結果が得られているということを踏まえて、酸化反応に寄与する光誘起正孔の酸化力の違いを明らかにすることで光触媒メタン酸化反応の微視的な描像を明らかにしていく。
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