2022 Fiscal Year Annual Research Report
Creating nano-scale molecular polariton states on metal surfaces
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22J01438
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
高橋 翔太 分子科学研究所, 物質分子科学研究領域, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 表面分子 / 非線形分光法 / プラズモニクス / 極微分光法 / レーザー分光法 / 強結合 / ポラリトン状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はナノサイズの極微ポラリトンの検出・評価に必須な、光の回折限界を超える極微非線形分光手法の開発に取り組んだ。具体的には、走査トンネル顕微鏡(STM)と超短パルスレーザーを組み合わせた新奇極微非線形分光手法の実現のため、金属プローブ探針先端と金属基板の間のナノギャップで起こるプラズモニック電場増強特性を正確に把握するとともに、これを有効に制御・利用することに挑戦した。従来の通説では、ナノギャップにおける電場増強特性はギャップ近傍のナノスケールの探針先端形状が支配すると考えられてきたが、形状の異なる複数の探針を用いてナノギャップからの非線形光学応答を詳細に分析・評価したところ、探針先端の形状に加えマイクロメートルスケールの探針シャフトの構造も光増強特性に大きな影響を与えていることが明らかになった。また、STM金属探針の光増強特性は非常に広帯域な波長帯をカバーすることも明らかにしており、このような特異的な光学特性は光の波長変換を伴う非線形光学現象を増幅させる際に非常に有効に機能することも判明した。さらに、探針の幾何学的形状の情報からSTM金属探針の非線形光学特性を理論的に精度よく予測する試みにも成功しており、より緻密なプラズモニック探針の成型・制御に役立った。こうした知見に立脚することで、当該年度には表面ナノ分子系に対する極微非線形分光の測定にも成功しており、極微分光計測の新たな可能性を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の達成には、表面に存在するわずか数分子由来の分光信号を選択的に検出可能な極微非線形分光手法の開発は必須であり、本年度はこの新奇手法の確立および洗練化に関して極めて大きな進展があった。可視光から赤外光にわたる広帯域な光を同時に増強できるという、プラズモニックSTM探針特有の非常に優れた光増強特性を見出すことができ、さらにこうした光学特性の発現にはSTM探針が本質的に有するナノメートルスケールの先端およびマイクロメートルスケールのシャフトの存在が鍵を握っていることも明らかにした。これは極微金属探針先端におけるナノサイズ光圧縮・増強過程に関して、これまで見過ごされてきた重要な基礎的理解を与えるものであり、かつ極微非線形分光法の開発・最適化に向けた強力な指針を与える知見でもある。さらにこうした結果をもとに、本研究の根幹をなす計測手法である極微非線形分光法の開発・確立にも実際に着手し、金属探針-金属基板間のナノギャップにおいて非常に効率的に非線形光学過程をプラズモニック増強させることにも成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
極微ポラリトンの検出・評価のための分光手法の確立が完了し、今後はその創成と制御に重点を置いて研究を展開する。種々のプラズモニック金属探針を用い、極微光と表面吸着分子系との間に巨大な光-物質相互作用を誘起することで、極微ポラリトン状態を創成するとともに、極微光の自由度を積極的に利用した分子の機能制御・物性創発の可能性を探求する。
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