2021 Fiscal Year Annual Research Report
老化細胞におけるDNA/RNAハイブリッドを介したがん促進機構の解明
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21J01769
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
菅原 祥 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞老化プロジェクト, 特別研究員(PD) (60870144)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞老化 / SASP / RNase H2 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、老化細胞ではDNA/RNAハイブリッドを選択的に分解する酵素であるRNase H2の酵素活性中心を持つサブユニットRNaseH2Aの発現が減少していることを見出している。しかし、老化細胞でなぜRNaseH2Aの遺伝子発現が低下するのか、その分子機構は不明であり、RNaseH2A発現制御機構も報告されていない。 我々はRNaseH2A遺伝子のプロモーター配列を検証したところ、転写因子であるE2Fファミリー分子の結合配列が複数存在することを見出した。老化細胞ではE2Fファミリー分子の転写活性が低下していることがわかっているため、その検証を行なったところ、E2F1やE2F3がRNaseH2Aプロモーター上に結合することが示唆された。またE2Fファミリーの共役因子であるDP1を正常細胞でノックダウンしたところ、RNaseH2Aの発現がmRNA、タンパク質共に減少することが確認された。RNaseH2Aプロモーター下流でルシフェラーゼを発現するレポータープラスミドを作成し検証した結果、E2F結合配列に変異を入れた際にルシフェラーゼのシグナルが減少すること、並びにE2F1を過剰発現した際にルシフェラーゼのシグナルが増加することが確認された。以上の結果から、RNaseH2Aの発現はE2Fファミリーによって制御されていることが示唆された。 老化細胞でのRNaseH2A発現低下がSASP因子の誘導に寄与しているかを検証するために、老化細胞にRNaseH2Aを過剰発現しておく実験を行った。その結果、老化細胞におけるRNaseH2A過剰発現はSASP因子である炎症性サイトカインやケモカインの発現上昇を抑制することがわかり、SASP誘導に対するRNaseH2Aの重要性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
老化細胞でRNaseH2A遺伝子の発現が低下するメカニズムとして、E2Fファミリーによる制御があることを明らかにした。また、老化細胞におけるRNaseH2Aの発現低下がSASP因子である炎症性サイトカイン群の発現誘導に重要であることを示すことに成功しており、当初の予定通り、おおむね順調に研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果からRNaseH2AがSASP因子の発現誘導に重要であることが示唆されている。この知見をさらに深め確実なものにしていくために、正常細胞でのRNaseH2Aノックダウン実験を行い、細胞老化マーカーやSASP因子の発現変動を評価することで、SASPひいては細胞老化へのRNaseH2Aの重要性を検証していく。また、がん細胞でも似たようなメカニズムを介して炎症性サイトカイン群の発現が上昇し、がんの悪性化に寄与している可能性を予想しているため、がん細胞でも同様のノックダウン実験を行い、がん細胞の機能に対するRNaseH2Aの関与を検証していく予定である。
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