2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of conductive ferromagnetic oxide nanosheets and pioneering of printable spintronics
Project/Area Number |
22J00763
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
林 兼輔 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
|
Keywords | 酸化物ナノシート / ナノ複合材料 / マルチフェロイック / ガーネット酸化物 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究では室温強磁性を示す導電性酸化物ナノシートの開発や、酸化物ナノシートをシードレイヤーに用いた磁気デバイスの開発を行い、従来のスピントロニクス研究の延長線上にはない、プリンタブルスピントロニクスという新たな研究分野を創生することを目指している。2022年度は、申請時の計画通り、アメリカ合衆国のMITで行っている「Ca2Nb3O10(CNO)ナノシートを用いたガーネット-ペロブスカイト(G-P)複合材料の作製とそのマルチフェロイック特性の研究」を継続して行ったためその研究成果を報告する。 ガーネット基板であるGd3Ga5O12(GGG)の基板上に、ペロブスカイト構造をもつCNOナノシートを散布し、その基板上にBi3Fe5O12(BIG)を蒸着することで、GGGの表面上にはガーネット相であるBIGを、CNOの表面上にはペロブスカイト相であるFe-rich BiFeO3(BFO)をエピタキシャル成長させることに成功した。また、蒸着させる材料をBFOに変えた場合はGGGの表面上にはBIGとBiO2が形成することが確認され、BiとFeの組成比が3:5以上になると不純物相が発生することが分かった。さらに詳細な構造を観察するためTEMによる試料の断面観察を行ったところ、Fe-rich BFOの一部が分解しアモルファス状態の鉄酸化物が発生していることが分かった。また、CNO界面のBFOの結晶構造は通常の菱面体晶ではなく、自発分極がより大きな正方晶のBFOが形成されることも分かった。ガーネット相とペロブスカイ相の界面には結晶粒界や不純物相が確認されず、原子配列が緩やかに変化し接合していることが確認され、特定の結晶面で接合しているエピタキシャル関係がないことが確認された。G-P複合材料の作製に成功しその構造を解明したため、今後はそのマルチフェロイック特性の測定を行っていくことを計画している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画通りGGG基板上にCNOナノシートをプリントし、任意の場所にペロブスカイト構造を持つG-P複合材料の作製に成功したため、おおむね順調に進展していると評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
2023年度はG-P複合材料のマルチフェロイック特性の測定を計画しており、具体的には以下の2点を行う。 ①作製したBIG and Fe-rich BFO複合材料の表面上に2本の電極を作製し、その電極間の磁気光学カー効果(MOKE)測定の結果を電圧印加時と無印加時で比較する。BFOは強誘電体(圧電体)であるため電圧の印加により体積が変化し、BFOと接合しているBIGに応力が加わるため、MOKE測定で得られるM-H loopに変化が生まれることが期待される。さらに、BIG and Fe-rich BFO複合材料の内部のBIGとFe-rich BFOの割合を変化させることで最も電気磁気効果が大きい割合を見出し、BIG and Fe-rich BFO複合材料におけるマルチフェロイック特性の有用性と起源を議論する。 ②GGG基板上のG-P複合材料はGGG基板が絶縁体であるため試料面直方向に電圧を印加できない。BIGのBiの一部をYで置換したBi-YIGは導電性Si基板上に作製ができるため、CNOナノシートをプリントしたSi基板上に多結晶Bi-YIGと単結晶Fe-rich Bi-YFOの複合材料を作製し、試料面直方向に電圧を印加した場合のマルチフェロ特性を解明する。 Bi-YIG and Fe-rich Bi-YFO複合材料の作製後は、①の測定と面直方向の誘電分極の外部磁場に対する応答をPFMで測定する。Bi-YIGが外部磁場により磁化する際に磁歪によってその体積が変化するため、Bi-YIGと接合しているBi-YFOに応力が加わり、PFM測定で得られるP-E loopに変化が生まれることが期待される。さらに、MOKE測定とPFM測定を比較することで、電場に対する磁気応答と磁場に対する電気応答を比較することができ、G-P複合材料におけるマルチフェロイック特性のより深い理解が可能となる。
|