2020 Fiscal Year Annual Research Report
水田のメタン生成において細胞外電子伝達は重要か?二重同位体標識による直接定量
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20J40189
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
梶浦 雅子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境研究部門, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 経路別メタンフラックス / 分離定量法の開発 / 気泡バブル由来のメタン / 遊離酸化鉄 / 黒ボク土 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の主な成果は以下の通りである:(1)日本の水田からのメタン排出量と土壌特性についての過去26 年間に論文掲載されたデータを統計解析し、黒ボク土水田土壌で特異的に排出量が小さく(低地土と比べて3 割減)、その原因は排水速度よりも遊離酸化鉄が多いことに起因することを明らかにした、(2)携帯型メタン濃度計を用いた水田での現地観測で得られた高時間分解能のデータから、イネの通期組織経路および土壌表面から噴出する泡を介したメタン排出量を分離定量する解析方法を開発した、(3)コシヒカリを植えた水田からの昼間のメタン排出量のうち、泡由来が占める割合はイネが生育するに従って増え、生育後期には6割にも上ること、また生育後期のメタン排出量は、イネ経路、泡由来ともに気温が高いと多くなる傾向にあったが、温度に対する感受性は特に泡で大きいことを明らかにした、(4)様々な品種についての3255 の観測データをもとに、経路別メタン排出量の推定精度は、より長時間観測することで高まること、また泡の発生頻度が高いほど観測時間を長くとった方がよく、泡の発現頻度が低い生育初期は5 分程度、発生頻度が高いときは16 分程度必要であることを明らかにした。特に(2)、(3)はこれまでの知られていなかった気泡バブルによるメタンの放出を定量的に解析した成果であり、水田からのメタン排出メカニズムの解明に向けた大きな躍進といえる。また、本研究で生育後期の泡の重要性が示され、水田メタン排出量の低減策を講じる上で焦点をより明確にしたことも大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、水田からのメタン排出プロセスの解明にむけた躍進的成果を得ることができた。一方で、予定していた微生物実験に関する消耗品がコロナ禍の影響で十分に得られず、また実験に用いる供試土壌の全国各地へのサンプリングも控えたため、本研究課題の進捗はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度行うことができなかったサンプリングと予備実験を行う (1)土壌サンプリング:鉄酸化物の量や質が異なる可能性のある水田土壌を全国数か所から採取する。(2)実験に供する土壌の選抜:鉄酸化物の質や量を選択溶解法やXRDなどによって調べ、仮説検証に最適な水田土壌(フェリハイドライトの多い黒ボク土、マグネタイトの多い砂質土壌、鉄酸化物量の少ない老朽化水田土壌、ヘマタイトの多い水田利用歴の浅い赤黄色土など)を選抜する。(3)選抜した土壌の基礎理化学分析:全有機態炭素量、全窒素量、易分解性有機物量、可給態窒素量、マンガン酸化物量、硫黄含量、土壌有機物の化学性(13C-NMR)、pH、電気伝導度を測定する。(4)RNA/DNA 抽出キットの選抜:16S rRNA やメタトランスクリプトーム解析用のRNA/DNAを抽出するキットを数種類試し、最も効率よく抽出できるものを選択する。(5)DIET 定量実験におけるガス/土壌サンプリングのタイミングの選定: 予備実験として、同位体標識していない基質を用いて本実験同様の培養実験を行う。その際、エタノール、酢酸、メタン、CO2 生成量をモニタリングし、酢酸蓄積、メタン生成などの各フェーズが捉えられるようなサンプリングの間隔やタイミングを決定する。このとき土壌も採取し、(4)のRNA/DNA抽出キットの選抜試験に供す。 また、1年目に解析を行った、水田からの経路別(イネの通期組織、土壌から噴出する泡)メタン排出量の測定法および、その温度依存性について、国内外の学会で発表し、論文を執筆、投稿する。
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Research Products
(3 results)