2022 Fiscal Year Annual Research Report
根粒菌の植物共生能に関与する大規模なゲノム再編成メカニズムの解明
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22J01397
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
原 沙和 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 遺伝子水平伝播 / 根粒菌 / 適応進化 / 比較ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
マメ科植物に共生する根粒菌のゲノムには共生に必須な遺伝子が集まる「共生アイランド(SI)」領域が存在し、SIは水平伝播により獲得される。Bradyrhizobium属は根粒菌として知られるが、土壌や非マメ科植物根でも普遍的に棲息し、宿主環境により適応的なゲノム構造は異なると考えられる。本年度では、非マメ科植物ソルガムに内生する当属細菌に着目し、分離株のゲノム情報からゲノム構造の特徴、SIの保存性、SI転移痕跡の有無を明らかにした。また、SI欠失・獲得現象のモニタリングのための蛍光標識株の設計および予備試験を開始した。 ソルガム根から分離された当属細菌のゲノム解析を行なったところ、ソルガム内生菌はほとんど(36分離株中35株)SIを持たないことが明らかになった。したがって非マメ科植物根ではSI非保有株が優占化する可能性が示唆された。 また選択的に分離されたSI保有株38株と上記分離株を合わせるとB. ottawaense種内において特異的にSI保有・非保有株が混在することが明らかになった。したがって当種では非マメ科植物根圏において、これまで考えられてきたよりも高頻度でSIの水平伝播が起こっていると考えられた。さらに一部のSI非保有株にはSI近傍にSI転移痕跡様配列(tRNA部分反復配列)が存在することが明らかになった。 以上を踏まえてB. ottawaense分離株(SI保有、非保有それぞれ11株)を用いて、植物根圏での動態解析の予備試験を行なった。SI保有、非保有株を特異的に検出するプライマーを設計し、qPCRにより検出できることを確かめた。 またB. ottawaense SG09を用いて、蛍光(DsRed, GFP)標識株の設計を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遺伝子水平伝播のモニタリングのため、計画当初は蛍光標識株の検出にフローサイトメーターの利用を考えていたが、施設的な制限や検出限界の関係から使用できないことになった。このため、蛍光標識株を再設計する必要があり計画より遅れてしまった。現在はフローサイトメーターを用いない方法での遺伝子水平伝播のモニタリング系を構築中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度以降は計画通り次の内容を遂行する。 1)非マメ科植物根圏における共生アイランド(SI)保有・非保有株の動態の観察、2)SI獲得・欠失モニタリング系の構築の完了および人為的高頻度化によるSI獲得・欠失現象観察、3)SI獲得・欠失による植物共生能・土壌生残能への影響評価、4)SI獲得・欠失メカニズムおよび進化シナリオの解明を行う。「現在までの進捗状況」に記載の通りモニタリング系において変更があったが、計画通り遂行できると考えている。
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Remarks |
研究成果などをまとめた個人のWebページ。
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