2023 Fiscal Year Annual Research Report
寄生植物-宿主間と植物-菌根菌間における他者認識の分子機構
Project/Area Number |
22KJ3127
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小川 哲史 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 寄生植物 / 屈性 / ストリゴラクトン / 菌根菌共生 / KAI2 |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は周囲の他者と共生関係や寄生関係を築き、栄養を確保している。本研究では、植物における菌根菌の認識と寄生植物における宿主植物の認識に共通する分子機構の解明を行なった。 まず、寄生植物が宿主を認識し接近する屈性のメカニズムに着目して研究を進め、宿主由来のストリゴラクトン(SL)がハマウツボ科のコシオガマ並びにストライガの屈性を特異的に誘導すること、SLはコシオガマの根において植物ホルモンのオーキシンに対する応答を左右非対称に引き起こし屈性を誘導することを発見した。また、SLの認識について、イネと菌根菌との共生において重要とされる受容体KAI2から改変されたSL受容体が屈性に重要であることを明らかにした。 次に、植物の菌根菌認識と寄生植物の宿主植物認識に関するメカニズムにおける共通点を解明するため、シロイヌナズナを用いてKAI2シグナルを制御する分子メカニズムの解明を進めた。KAI2は植物体内で生産されているKAI2 ligand(KL)という植物ホルモンを認識するとされている。しかし、KLの詳細は未解明であり、KAI2を介したシグナルを研究する上で大きな障壁となっている。そこで、KLの生合成に関与する遺伝子の同定を目的とした。KLを欠損した植物体はkai2変異株と同様の表現型を示すと考えられるため、順遺伝学的スクリーニングによりkai2と同様の表現型を示す変異株を選抜した。その結果、56,000株から24株が選抜され、kai2 mimic(kami)と名付けた。さらに、kamiのゲノムにおける変異導入箇所を探索した結果、7個のKL生合成遺伝子候補が得られた。今後はこれらの遺伝子を解析し、KL生合成遺伝子を同定する。 また、菌根菌との共生におけるKAI2を介したシグナルの影響を解析し、植物ホルモンのエチレンがKAI2を介したシグナルを阻害することで共生を抑制することを明らかにした。
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