2022 Fiscal Year Annual Research Report
Investigation of microbiome-mediated controlling lipid metabolism on homeostasis in the eye
Project/Area Number |
22J00805
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小川 護 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 12/15-LOX / マイボーム腺 / 結膜上皮細胞 / 菌依存的な脂質代謝変化 / コレステロール硫酸 / 硫酸基転移酵素SULT / 脂質メタボローム解析 / in vitroスクラッチアッセイ |
Outline of Annual Research Achievements |
菌依存的な眼球における12/15-Lipoxygenase (LOX)活性の変化を明らかにするため、抗生剤4剤カクテル投与マウス眼で12/15-LOXのmRNA発現を定量PCRにて評価した。以前より眼球のみでの検証は行っていたが、付属器である涙腺、マイボーム腺・結膜組織も測定したところ、眼球、マイボーム腺・結膜において抗生剤投与マウスにおいて12/15-LOX発現は野生型マウスと比較して有意に減少していた。菌依存的な12/15-LOXの発現変化は角膜だけでなく結膜やマイボーム腺を含めた眼表面の広範囲で起こることが分かった。 眼球の脂質メタボローム解析を新たに四重極飛行時間型質量分析装置を用いて行ったところ、コレステロール硫酸が抗生剤投与マウス・無菌マウスにおいて野生型に比して有意に増加していた。さらに、眼球、涙腺、マイボーム腺・結膜組織において定量PCRで評価を行うと、代謝物産生酵素である硫酸基転移酵素sulfotransferase(SULT)が全ての組織において抗生剤投与マウスで野生型に比して有意に増加していた。また、眼球、涙腺、マイボーム腺・結膜組織において発現が高いSULTのサブタイプは異なっていた。いくつかのSULTはコレステロールを基質とすることが不明なため、オキュラーサーフェスにおける新規機能の発見が期待される。 in vitroにおけるヒト培養角膜上皮細胞を用いて細胞培養及び創傷治癒モデルのスクラッチアッセイを確立した。これによりマウス組織とヒト培養細胞両者での創傷治癒評価や脂質化合物投与の検証が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
抗生剤投与モデルマウスを用いて多角的な検証を行うことができている。マウスから眼球のみを採取しようとすると眼表面に存在する結膜やマイボーム腺組織が安定的に採取出来ないことがわかり、切除方法を変更することで涙腺や結膜・マイボーム腺を部位別に回収する方法を確立した。 新規で12/15-LOXの発現が認められた結膜上皮に関しては分子マーカーの選定や組織評価を行なっている。角膜の周辺部、つまり輪部においても12/15-LOXの発現が高いが、角膜の場合ホールマウント染色という組織評価法が適しているため、手技を習得し安定した免疫染色による検証を行っている。 脂質メタボローム解析において当初は三連四重極型質量分析装置を用いていたが、新たに四重極飛行時間型質量分析装置を用いて眼球だけでなく部位別に涙腺や結膜・マイボーム腺の解析を行うことに成功している。多様な脂質分子を広範囲に検出することが可能になったため、コレステロール硫酸以外にも菌依存的に変動する代謝物を捉えている。また、それらの眼球における局在を高感度で可視化するため、MALDIイメージング質量分析装置を用いた眼球の脂質イメージング解析の最適化を行なっている。 ヒト培養角膜上皮細胞に関してはスクラッチアッセイだけではなく、遺伝子の過剰発現や欠失など細胞操作、脂肪酸の取り込み実験などの系を検証している。 また、以前の実験で抗生剤カクテル投与マウスや無菌マウスの眼球脂質メタボローム解析によって、特定の脂質代謝物の減少を確認したが、菌の絞り込みを行うため抗生剤カクテルではなく、バンコマイシン・メトロニダゾール・アンピシリン・ネオマイシンの単剤飲水投与群に対して脂質メタボローム解析を行った。コントロールに比して、メトロニダゾール及びバンコマイシン投与群で12/15-LOX由来の代謝物の減少が確認できる予備的データを得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)脂質代謝を制御する菌の同定:単剤投与モデルによって12/15-LOX由来の代謝物減少が認められたメトロニダゾール及びバンコマイシン投与群に対して、創傷治癒実験を施行し表現型を解析しメタボローム解析との相関を評価する。マウスの糞便および眼球(特に眼表面の角膜・結膜)を採取し、菌叢16S-rRNA シークエンスを野生型および12/15-LOX 欠損マウスで行い、単剤投与の結果と合わせて菌叢をさらに明らかにしていく。既に眼球において存在が報告されているコリネバクテリムなども含め、菌ライブラリーを用いることで12/15-LOX由来の代謝物の基質となる脂肪酸やコレステロール、またはヒト培養角膜上皮細胞との共培養を行い活性評価を行う。 2)菌依存的に変化する脂質代謝物の同定と創傷治癒効果への検証:菌依存的に減少する脂質としてコレステロール硫酸が同定されたが、硫酸基転移酵素SULTをクローニングしin vitroにおけるコレステロール硫酸合成の活性評価を行う。SULTの発現をin vivo, in vitroで阻害剤など含め低下させ、創傷治癒の表現型を検証する。脂質イメージング解析を行い、コレステロール硫酸を含めた菌依存的に眼球で変化する脂質化合物の局在を明らかにする。 3)菌依存的な眼表面における脂質代謝制御機構の解明:創傷治癒が遅延する抗生剤投与マウスに12/15-LOX由来代謝物を点眼投与し治癒が回復するかどうか確認する。抗生剤投与マウスの免疫染色を組織ホールマウント・切片にて行い、菌依存的に起こっている局所的な変化の検証として、12/15-LOX発現細胞である角膜上皮細胞および結膜上皮細胞を評価する。Keratin8, 12, 14, 19, ABCB5, p63といった角結膜上皮細胞に重要な遺伝子発現を角結膜上皮組織の定量PCRや RNA シークエンスを行う。
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