2023 Fiscal Year Research-status Report
水流を感受する感覚器「感丘」の形態的多様性とその適応的意義
Project/Area Number |
22KJ3171
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 真央 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | テンジクダイ科 / 感丘 / 側線系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では水流を感受する受容器(感丘)の形態的特徴が種間で分化している現象について究明する.当該年度は,昨年度の結果をうけて研究対象種の範囲をやや広げ,表在感丘が多数発達するという特徴をもつグループ(テンジクダイ科やハゼ亜目など)と,そのような特徴を含まない側線系を具えるフエダイ科オキフエダイを中心的に観察した. 神経支配の観点からは,アマミイシモチ(テンジクダイ科)とオキフエダイの間で相同な感丘群同士では感受方向が一致しているのに対して,テンジクダイ科に特有な感丘群ではそれらと異なる,補完的な感受方向をもつことが明らかになった.また,一般的な魚類では表在感丘の感受方向には部位間で「偏り」があるものの,テンジクダイ科魚類では上記の補完的な感受方向をもつ表在感丘によって「偏り」がある程度解消されていた.テンジクダイ科の他の族や亜科の種も簡易的に観察した結果,科内での感丘の感受方向性は種間でよく保存されており,従来の知見と併せるとテンジクダイ科において補完的な感受方向をもつ表在感丘の出現は本科種の共通祖先で生じたと示唆される. 個々の表在感丘の形状については,テンジクダイ科やハゼ亜目では丸みを帯びたダイヤ形(両側方に角状突起をもつ)で,かつ感受方向は感覚細胞群の長軸方向と平行であり,個体内では表在感丘群間で外形に明瞭な差異はなかった.一方,オキフエダイでは個々の表在感丘は長細い楕円形で側方突起はなく,感受方向は感覚細胞群の長軸方向と直角であり,部位間で表在感丘の長短比がわずかに異なっていた.このような種間差はあるものの,どのグループでも表在感丘自体の最大幅は感受方向と直交する方向であり,感受方向に沿った水流を受けやすい形態をとっていることは共通していた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感丘の感受方向性とその種間差について一定の知見が得られたといえる.観察対象種の範囲をやや広げることで,個々の感丘の形態に加えて感受方向性についての議論も行うことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは感丘の構成要素のうち有毛細胞や支持細胞についてのデータ取得に大きくリソースを割いてきたため,今後はその他の要素であるクプラについての究明を進めることで体系的な知見の構築を目指す
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Causes of Carryover |
台風による出張取り止めが1回生じたために次年度使用額が生じた.当該出張は次年度に行う予定である.
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