2022 Fiscal Year Annual Research Report
有孔虫―共生藻―共生細菌類の三者共生系に外部ストレスが及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
21J01011
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
前田 歩 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 共生藻 / 大型底生有孔虫 / 褐虫藻 / 環境DNA / メタバーコーディング解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
大型底生有孔虫(LBF)・共生藻・共生細菌の三者共生系を、物質供給と環境ストレス耐性の観点から明らかにするために、1)LBFにおける分解酵素生産者の解明、2)高温・強光条件下での共生微生物群集の変化の検証を行うものである。今年度はア)Soritidae科無性生殖個体を用いた飼育実験、イ)フィールド調査及び成熟Soritidae科個体の採取を行い、沖縄島周辺のSoritidae科と共生する褐虫藻の地点間の差異に関する研究調査を実施した。なお、褐虫藻はサンゴなどに共生する渦鞭毛藻である。 ア)無性生殖個体(4グループ)を用いて、水温2段階(25℃、29℃)、光の波長2条件(全波長、深場を模して青に偏向)、堆積物の有無の設定を設け、共生褐虫藻群集への影響を明らかにする実験を行った。飼育個体に対し、網羅的に褐虫藻の生物情報を取得できるメタバーコーディング解析を行ったところ、高温や青に偏向した光の条件では褐虫藻群集が飼育前個体と異なっている可能性が示された。 イ‐1)沖縄島周辺9地点のサンゴ礁(<2 m)からSoritidae科のLBFを採取した。これの褐虫藻のメタバーコーディング解析を行い、地点間の褐虫藻群集を明らかにした。ほとんどの個体は褐虫藻cladocopiumとFreudenthalidiumの複数系統を組み合わせて共生させ、地点ごとにその割合や組み合わせが異なる結果となった。 イ‐2)沖縄県阿嘉島周辺で深度別に成熟したSoritidae科LBFを採取し、共生細菌群集の差異をメタバーコーディング解析により明らかにした。サンゴ礁浅部と深部で褐虫藻群集構成の異なるサンプルであったが、共生細菌群集は1地点の個体群のみ大きく異なっていることが示された。LBF個体ごとの細菌群集と褐虫藻群集の間に弱い相関がみられたが、共生細菌群集はより微視的な周囲の環境への適応状況が影響すると示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、1)大型底生有孔虫における分解酵素生産者の解明、および、2)高温・強光条件下での共生微生物群集の変化の検証、3)野外における、大型底生有孔虫集団の地点、季節による共生微生物群集の変化の調査を行うものである。このうち、1)については大型底生有孔虫-共生藻-共生細菌のデータセットがそろいつつあり、2)については予察的な飼育実験を実施し、データ解析も終了している。3)については、ほぼ沖縄島および周辺に生息する成熟Soritidae科個体の採取を行い、沖縄島周辺のSoritidae科と共生する褐虫藻の地点間の差異に関して明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
Soritidae科無性生殖個体を用いた飼育実験において、高温や青に偏向した光の条件では褐虫藻群集が飼育前個体と異なっている可能性が示されたが、褐虫藻群集の変動は個体差との分離が難しく、追加の飼育実験が必要である。 また、飼育前後の、Soritidae科無性生殖個体の共生細菌群集の変化を明らかにするため、メタバーコーディング解析を行うとともに、共生細菌群集データから、卓越する代謝経路の推定なども行っていく方針である。
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