2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J40221
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
坂本(渋谷) 幸子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 深部地下生命圏 / メタン生成 / メトキシ芳香族化合物 / 嫌気性微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
深部地下圏に棲息する微生物は、代謝反応(有機物の酸化分解)からエネルギーを獲得し生育するが、深部地下圏は、代謝反応により獲得できるエネルギー量が少なく、エネルギー面で厳しい環境である。このような環境下で、地下微生物がエネルギー獲得のために、どのような生存戦略をとり、生態系を構成するのかは未だ不明である。そこで、本研究課題では、深部地下圏の根源有機物分解メタン生成において中核的な役割を担う微生物群の動態とエネルギー獲得を巡る生存戦略の解明を目的とし、特に地下の重要な根源有機物の一つであるメトキシ芳香族化合物(MAC)に焦点を当てる。 当初の計画では、初年度に国内の複数のサンプリング地で深部地下圏試料を採取し、採取試料を用いた研究室での培養実験などを行うことしていたが、本年度は covid-19 の影響もあり、ゲノム解析及び単離菌株を用いた培養実験をメインとした研究を進めた。具体的には、本年度はMAC分解能をもつホモ酢酸生成菌、メタン生成菌、共生細菌それぞれの代謝経路のギブスの自由エネルギー(ΔG) を算出し、それぞれの単離菌株を用いて培養実験を行い、獲得できるエネルギー量に応じた増殖特性などの基礎データを取得した。また、ゲノム解析を行いMAC分解微生物の系統の多様性について評価を行い、深部地下圏を含む自然界においてこれまでに考えられているよりも多種多様な微生物がMAC分解に関与している可能性を示す結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、MAC分解微生物の系統の多様性についてゲノム解析を行った。Genome Taxonomy Database(GTDB)に登録されているGTDB representative strain genome全てを対象に、嫌気環境でMAC分解の鍵となる遺伝子であるO-demethylaseにホモロジーのある遺伝子を抽出した。その結果、深部地下圏由来のゲノムを含む数百以上の種のゲノムからO-demethylaseにホモロジーのある配列が検出され、またこれまでに主にMAC分解微生物が報告されているFirmicutes門以外の系統でもO-demethylaseにホモロジーのある遺伝子が検出された。これより、深部地下圏を含む自然界においてこれまでに考えられているよりも多種多様な微生物がMAC分解に関与している可能性が示唆された。 また、地下微生物の代謝で獲得可能なエネルギーと微生物動態との関係性についての評価を行うために、熱力学的解析を行い、MAC分解能をもつホモ酢酸生成菌、メタン生成菌、共生細菌それぞれの代謝経路のギブスの自由エネルギー(ΔG) を算出した。さらにその結果を用いて、本年度は単離菌株を用いて実験を行い、ΔGに応じた増殖特性などの基礎データを、次年度以降に実施する混合培養実験に向けて必要なデータを取得した。
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Strategy for Future Research Activity |
地下微生物の代謝で獲得できるエネルギー量と微生物動態との関係性を明らかにする。初年度に実施することができなかった深部地下圏試料のサンプリングを行う。そして、初年度実施した熱力学的解析の結果を用いて、ΔGの変動に応じて、エネルギー代謝に関し、どのような代謝様式が用いられるのかを採取した深部地下圏試料を用いた培養実験で明らかにする。各培養系の結果を統合的に比較解析し、ΔGが地下微生物の動態や生存戦略にどのように影響するのかを明らかにする。
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