2021 Fiscal Year Annual Research Report
ライブイメージング並列化が拓く細胞質の混み合いと細胞機能を繋ぐ機構の総覧と解明
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21J01354
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
杉山 博紀 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 生命創成探究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | マイクロ流体デバイス / ライブイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
分裂酵母で並列ライブイメージングを実現するうえで,本研究ではマイクロ流体デバイス(MFD )による実験系構築から取り組むことを構想している.MFDを用いた実験は,所属研究室での新規実験系となるため,本年度ではまず基本的な実験装置の導入・整備から始めた.また,MFD作成のための,設計値をどの程度の解像度・精度で造形できるかについての条件最適化を含む基礎検討を完了し,当初の構想のMFDを試作し,その概念実証実験などを進めた. MFDでの実験系を真に有用なものとするには,従来法での計測の不足点のみならず,従来法との互換性を保証するうえで担保すべき精度や条件などについても精査する必要がある.そのためのケーススタディとして,細胞周期制御の主要因子であるCDKの活性をライブイメージングする新規実験系を選択・構築した.本実験系は,蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を利用した新規バイオプローブの開発を含むもので,従来の遺伝学や生化学によるCDK制御に関する反応ネットワークの知見を背景に,その動的な描像を初めて明らかにするものである.本成果は酵母遺伝学フォーラム 第54回研究報告会 (2021年8月)にて報告した他,現在論文執筆中である. また,この実験を通して,当初構想していたMFDデザイン・運用法では,当初の目的の実現には十分な精度を保証できないことが明らかになった.現在,新たな捕捉原理や設計指針を再検討・立案し,試作を開始したところである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
デバイスの試作,初期検討を通じて,当初想定していたデバイス設計や運用法では,目的の実現には十分な精度を保証できないことが明らかになった.その点では研究提案時の予定から外れてはいるものの,すでに新たな捕捉原理や設計指針を再検討・立案し,試作を開始できている.また,概念実証のために選択・構築した実験系(細胞周期制御におけるCDK活性のライブイメージング)において,論文として報告する意義のある新規の科学的知見を有する発見を得られている. 設計変更などの可能性は計画時から想定していたものであり,また研究の早い段階で想定していた設計の限界を見極められ,かつそれらの改善された新たな設計へ移行する指針を得られたことから,研究計画全体としてはおおむね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
分裂酵母の並列配置・スクリーニングデバイスの新たな設計戦略について,なるべく早期に実試験の可能な試作機を作成し,その概念実証実験までを完了する.特に,スクリーニング戦略については,デバイスのみならず酵母遺伝学と組み合わせた方策を検討しているため,株作製を含む基礎検討と並行して行う.また,万が一当該設計でも原理的な困難があった場合も想定し,異なる設計戦略を模索する. 他方,CDK活性ライブイメージングについては,すでに主要データを取得済みであり,なるべく早期に論文投稿し,年度内に出版することを目指す.
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