2022 Fiscal Year Annual Research Report
好熱菌に隠された新奇なDNA複製機構の解明は生命の初期進化の飛躍的理解に繋がる
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22J00053
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Research Fellow |
鈴木 匠爾 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門超先鋭研究開発プログラム, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | アーキア / 一本鎖DNA結合タンパク質SSB / ssb破壊株 / DNA複製機構 / 熱変性 |
Outline of Annual Research Achievements |
一本鎖DNA結合タンパク質(SSB)は一本鎖DNA上の二次構造を解消する機能を有しており、その機能は細胞内での効率的なDNA複製のために重要であると考えられていた。そのため、これまでにssb破壊株が単離された例は真核生物、バクテリア、アーキアにおいて1つもなかった。しかし、研究代表者は好熱性アーキアSulfolobus acidocaldariusのssb破壊株の単利に世界で初めて成功した。特に、ssb破壊株は高温下では通常通りの生育能を示すのに対し低温下では生育が困難(低温感受性)になるという興味深い生育温度依存的な増殖生理を示した。これまでの予想と異なり、なぜSSBが高温化での生育に必要ではなかったのか?その理由として研究代表者は高温下ではDNA複製機能におけるSSB機能が熱変性によって代替可能であったために効率的なDNA複製が維持され通常通りの生育能を示したのではないかと考えた。本研究では好熱菌の新奇なDNA複製機構として一本鎖DNA結合タンパク質SSBの機能に依存しない高温環境下での熱変性を利用したDNA複製機構を解明することを目的とし、遺伝学的解析および生化学的解析に取り組む。 本年度では遺伝学的解析の準備と生化学的解析に用いる組換えタンパク質の精製に取り組んだ。提供していただいたssb破壊株を復元培養し、以前報告した増殖生理を示すことを再確認した。また、生化学的解析に用いる好熱性アーキアの組換えタンパク質(DNA合成酵素PolB1とSSB)が大腸菌を用いた遺伝子発現系において高発現する条件を検討し、現在精製を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度、研究環境のセッティングに時間がかかり本研究計画を実施するのに遅れが生じてしまったため、研究計画の進捗が遅れてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、低温下と高温下でssb破壊株を培養した際の細胞内のDNA含量の推移をフローサイトメトリー により解析することで、低温下でのみDNA複製能が欠落し生育困難につながったことを実証する。また、生化学的解析に関しては、これらの精製タンパク質を用いた試験管内でのDNA合成実験を行い、DNA複製におけるSSBの機能が高温下での熱変性と同じであるのか調べる。
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