2021 Fiscal Year Annual Research Report
歯の喪失および軟食が視床下部の老化に及ぼす影響~自然加齢マウスによる解析~
Project/Area Number |
21J40002
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Center for Geriatrics and Gerontology |
Principal Investigator |
古川 匡恵 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 口腔疾患研究部, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 咀嚼 / オーラルフレイル / 軟食 / 海馬 / 視床下部 / 老化 / astrogliosis |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会の我が国において、高齢者の健康寿命を延伸することは喫緊の課題である。口腔の健康は健全な食生活を送るための基盤であり、QOL の維持・向上に必須である。特に、咀嚼は全身に様々な影響を与えていることが示唆され、その重要性が再認識されている。咀嚼を担う重要な器官である歯は、齲蝕や歯周病、歯牙破折などさまざまな原因で喪失し、その数は加齢に伴い減少する傾向にある。 本研究は臼歯の喪失または軟食が視床下部へおよぼす影響について同一の飼育環境で生育した若齢および老齢マウスの実験群とコントロール群の視床下部および海馬において、咀嚼と視床下部や海馬のastrogliosisとの因果関係を明らかにすることを、免疫組織学的、分子生物学的、行動学的に検討する。 マウスを用いて老化を検討した研究は現在まで多く行われているが、しかしどの研究でも、海馬を焦点にした研究であり、認知機能(恐怖条件付け行動)の測定、錐体細胞の定量が主である。本研究では、海馬だけでなく、視床下部にも焦点をあて、歯牙喪失が、脳の老化を促進するという点で大きく異なる。本研究では、自然老化マウスを使用することや、アストロサイトの老化であるastrogliosisを視床下部や海馬において解析、また軟食飼育といった独創的な研究を咀嚼の観点から解析を試みている。1年目は抜歯モデルマウスの飼育およびサンプル回収、解析を行う予定であったが、順調に研究が進み、2年目に行う予定であった軟食飼育についても並行して実験を行った。今後は引き続き検討を行い、得られた結果により、学会や論文発表を行う。 この研究は、歯の喪失や咀嚼機能の低下が脳、特に視床下部や海馬への老化に繋がることを明らかにし、咀嚼の重要性、欠損補綴の重要性についてエビデンスを持って啓発できる世界初の研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年目は抜歯モデルマウスの飼育およびサンプル回収、解析を行う予定であったが、順調に研究が進み、2年目に行う予定であった軟食飼育についても並行して実験を行った。 【抜歯モデルマウス実験について】 今年度は抜歯モデルマウスの飼育およびサンプル回収を行う予定であった。飼育およびサンプル回収とともに、行動実験、および海馬や視床下部における老化関連マーカーの発現検討について効率よく検討を行った。結果として、臼歯抜歯により、海馬や視床下部における老化関連マーカーの発現に影響が出る他、認知機能の著しい低下が認められることが明らかとなった。成果の一部を日本咀嚼学会第32回学術大会学会にて口頭発表した。発表後、多くの質問が寄せられ、様々な研究者とやり取りすることで知識を増やし、情報を収集した。得られた結果を吟味したのち整理し、学術論文を執筆し、「Molar loss induces hypothalamic and hippocampal astrogliosis in aged mice」というタイトルで Sci Repに投稿、2022年4月18日に掲載された。 【軟食飼育実験について】 2022年度に行う予定であったが、抜歯モデルマウス実験が順調に進んだため、並行して行った。当初はゲル食飼育を行う予定だったが、予備実験の結果より、ゲル食中に含まれる栄養素が固形食と異なっていたことから、粉末食に飲料水を混和した軟食に変更した他、飼育期間が短いと行動や認知機能に影響が出なかったことから若齢マウスのみで9ヶ月間飼育した。飼育およびサンプル回収とともに、行動実験、および海馬における老化関連マーカー等の発現検討について効率よく検討を行い、結果を得た。成果の一部を第63回日本歯科基礎医学会で発表した。現在、この軟食飼育実験については追加検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は主に、C57BL6NSlcオスマウス(若齢および老齢)を飼育、馴化後に固形食をゲル食に変更し、飼育する予定であった。先にも述べたが、1年目に予定以上に研究が進んだため、既に9ヶ月間の軟食飼育および抜歯モデルマウスの飼育を終えている。軟食飼育に関しては、予備実験の結果より、ゲル食中に含まれる栄養素が固形食(日本クレアCE-2)と異なっていたことから、CE-2の粉末食に飲料水を60%混和した軟食に変更した。また、飼育期間を9ヶ月まで延長した。攻撃性に関する検討も並行して行った。【抜歯モデルマウス実験について】既に学会発表および論文投稿を行っているが、必要に応じて実験の追試を行う。また、既に得られている他のサンプルの解析を続ける。【軟食飼育実験について】飼育を終えたため、得られたサンプルから染色やPCRなどの解析を続ける。また、必要に応じて実験の追試を行い、得られた結果を総合的に吟味して、学会発表、論文発表等を行う予定である。
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Research Products
(10 results)