2022 Fiscal Year Annual Research Report
超高感度原子結像法による電子線敏感材料の局所構造解析
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22J01665
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Japan Fine Ceramics Center |
Principal Investigator |
大江 耕介 一般財団法人ファインセラミックスセンター, ナノ構造研究所, 特別研究員(CPD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2027-03-31
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Keywords | 走査透過電子顕微鏡 / OBF STEM / 低ドーズ観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
走査透過電子顕微鏡(STEM)法は、原子スケールの大きさに収束した電子線を走査し、試料を透過した電子を検出することで結像する顕微鏡法である。STEMは極めて高い空間分解能を有しており、物質中の界面や表面といった局所原子構造の解析に非常に強力な手法である。しかし、近年では電子線耐性の低い電子線敏感材料の観察が大きな課題となっている。そこで、電子線照射ダメージの低減に必要な低電子線量条件においても明瞭に原子構造を可視化できる超高感度イメージング手法として、最適明視野(OBF)STEM法の開発を行ってきた。 本年度は、OBF STEM法の材料科学へのアプリケーション研究を中心に取り組んだ。特に、従来では電子線照射ダメージによって観察が困難だった多孔性物質であるゼオライトにおいてOBF STEM実験像を取得し、ゼオライトが有する特異な原子構造の直接観察に成功した。なお、ここでは軽元素でありゼオライトでは検出が難しいとされる酸素サイトも含めた全元素サイトについて観察することに成功した。さらに、このOBF STEM実験データに対して、動力学的散乱効果を考慮したマルチスライスモデルに基づくSTEM像シミュレーションを系統的に実施し、実験データとの精密な定量比較を行った。これによって、ゼオライト骨格中に吸着されたイオンの振る舞いにおいて異方性が生じていることが明らかになった。この異方性は骨格構造の形状に強く依存しており、OBF STEM法と像シミュレーションを効果的に組み合わせることによって、電子線耐性の低い試料においても精緻な原子スケールの局所構造解析が可能になったことを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、これまで開発を行ってきたOBF STEM法による電子線敏感材料の局所原子構造観察結果にSTEM像シミュレーションを組み合わせることによって、実験データの定量解析を行った。結像条件について系統的に実施したシミュレーションと実験結果を精密に比較することにより、多孔質材料であるゼオライト中に吸着されたイオンの振る舞いと骨格形状に強い相関があることを直接観察することに成功した。この結果から、研究課題の進捗状況としておおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き低電子線耐性試料における局所構造の観察と像シミュレーションを組み合わせた定量解析によって、局所原子構造が材料特性に与える影響を解明する。また、重元素を多く有し多重散乱が顕著になる材料系については、多重散乱効果がOBF像にどのようにアーティファクトとして現れるかを解析し、その補正法についてもアプローチを行っていく。
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Research Products
(6 results)