2021 Fiscal Year Annual Research Report
運動誘発性胃腸障害の発症メカニズムの解明:腸管免疫と消化吸収の相互作用に着目して
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21J01602
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
近藤 早希 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 ワクチン・アジュバント研究センター, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 運動誘発性胃腸障害 / 小腸 / 大腸 / 腸管免疫 / 消化 / 吸収 / 消化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
長時間の持久的運動は、腹痛や下痢といった消化器症状を引き起こすことが知られている。この現象は運動誘発性胃腸障害と呼ばれており、多くのアスリートがこの症状に悩まされているものの、その詳細なメカニズムについては未だ明らかとされていない。そこで、本研究では、主に腸管で役割を果たす腸管免疫と消化・吸収機能の相互作用に着目することで運動誘発性胃腸障害の発症メカニズムを解明すると同時に、症状を改善させるための新たな栄養摂取法の開発を目指すことを目的とした。 まず、本年度は、腸管免疫の観点から運動誘発性胃腸障害のメカニズム解明に迫るため、単回の高強度走行運動をマウスに行わせた場合に、運動誘発性胃腸障害の症状がどの程度認められるか検討し、さらに、その際の腸管免疫細胞の応答について検討を行った。マウスに単回の高強度走行運動後を行わせた場合では、下痢や血便といった消化器症状は認められなかったものの、FITC-Dextranを用いて腸管透過性を測定したところ、運動終了後には腸管透過性が亢進することが明らかとなった。また、単回の高強度走行運動終了直後における免疫細胞応答について明らかにするため、小腸粘膜固有層における各種免疫細胞(T細胞、B細胞、好中球、好酸球、マクロファージ、樹状細胞等)についてフローサイトメーターを用いて検討を行った結果、一部の免疫細胞に関しては運動強度依存的に変化を示すことが明らかとなった。したがって、単回の高強度走行運動を行った場合には、下痢や血便などの重度の消化器症状は認められないものの、腸管透過性が亢進し、それに伴い小腸粘膜固有層での免疫応答にも変化が生じる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、単回の高強度走行運動により、マウスにおいても運動誘発性胃腸障害の症状が認められるかどうか、さらには、高強度走行運動が腸管免疫機能に及ぼす影響について検討を行った。その結果、単回の高強度走行運動を行った場合には、下痢や血便といった重度の消化器症状は認められないものの、腸管透過性が亢進する結果が得られ、さらには、小腸粘膜固有層における一部の免疫細胞の応答にも変化が生じることが明らかとなった。したがって、研究は当初の計画通り順調に進んでいると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度と同様の高強度走行運動をマウスに長期間トレーニングさせた場合における、消化器症状の有無や腸管透過性、腸管免疫機能について検討を行う予定である。それと同時に、消化・吸収系機能がどのような影響を受けるのかについても検討し、腸管免疫機能との関連性を明らかにしていく予定である。また、本年度の結果から、高強度運動終了直後に小腸粘膜固有層における一部の免疫細胞が変化することが明らかとなったため、そのメカニズムの解明を目指す。
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