2021 Fiscal Year Annual Research Report
サンゴ共生藻と刺胞動物の共生成立と崩壊を制御する分子メカニズムの解明
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20J01658
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石井 悠 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(PD) (40770813)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、熱帯・亜熱帯海域の一次生産者として大きな役割を担うサンゴやイソギンチャクなどの刺胞動物と単細胞藻類である褐虫藻との細胞内共生成立の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。当該年度は、(1)共生の分子メカニズムを明らかにするための実験系確立に必要な、刺胞動物の発生を制御する分子の探索、(2)褐虫藻表面の糖タンパク質の共生への関与を解析するため、蛍光ビーズを用いた白化セイタカイソギンチャクおよびウスエダミドリイシサンゴ幼生による共生実験系の確立を行った。 (1)ウスエダミドリイシサンゴの変態過程には、ある点より発生が進むと幼生に戻れない、「不可逆点」が示されている。刺胞動物の遺伝子操作株を用いた解析系構築のため、昨年度から引き続きウスエダミドリイシサンゴの「不可逆点」に関わる遺伝子に関する解析を行なった。発生段階における「不可逆点」前後の、RNAseqによる網羅的な遺伝子発現量データを用いて、発現変動遺伝子の検出と、遺伝子の発現パターンによるクラスタリングを行なった。その結果、不可逆点前後で発現変動する遺伝子を検出することに成功した。中でも、Gタンパク質共役受容体(GPCR)をコードする遺伝子の発現量が変動することを明らかにし、さらに、不可逆点後にタンパク質分解関連遺伝子が大きく発現変動することから、変態の可塑性にはタンパク質分解制御が重要な役割を持つ可能性を示した。変態過程にタンパク質分解が関わっていることは本研究で新たに示されたことであり、刺胞動物の変態過程の基盤的分子メカニズムを明らかにできた。 (2)褐虫藻表面の糖タンパク質の共生への関与を解析するため、昨年度から引き続き、蛍光ビーズを用いた研究を進めた。ビーズに評価対象物質を結合させ、白化さ せたセイタカイソギンチャクに与え、体内に維持されたビーズの個数を評価する系を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に引き続き、ウスエダミドリイシサンゴを用いた解析を行った。多くの遺伝子の中から変態誘導分子となりうる分子を絞り込みその成果を出版した。褐虫藻表面の糖タンパ ク質の共生への関与については、評価系を確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ウスエダミドリイシを用いた解析により絞り込まれた分子を用いて、刺胞動物の変態誘導実験を行う。褐虫藻表面の糖タンパク質の共生への関与を解析するため、蛍光ビーズを用いた研究を進める。今年度確立した系を用い、個体数等を増やして検証する。
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Research Products
(4 results)