2020 Fiscal Year Annual Research Report
Evolutionary process of termite construction revealed by comparative and constructive approaches
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20J00660
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
水元 惟暁 沖縄科学技術大学院大学, 沖縄科学技術大学院大学、進化ゲノミクスユニット, 特別研究員(CPD)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2025-03-31
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Keywords | シロアリ / 集団行動 / 進化 / 巣建設 / 系統種間比較 / 好白蟻性昆虫 / 感染症モデル / 社会寄生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、シロアリの巣建設の系統種間比較を通じて、集団行動の進化プロセスを明らかにすることである。当該年度はコロナウイルス感染症による厳しい渡航制限があったため、当初の計画から変更せざるを得ず、文献調査および沖縄近辺の種の行動観察に焦点をおいた。 まず、網羅的な文献調査により、化石種76種を含む1638種のシロアリの体サイズのデータを集めた。このデータセットは後に行う行動の種間比較のために非常に有用な情報であるだけでなく、系統種間比較および進化モデルの当てはめによる、シロアリの体サイズの進化プロセスの研究につながった。シロアリは社会性を進化させた後、小型化し続けたと考えられてきたが、このモデルは絶滅種の情報を考慮すると支持されず、社会性の進化に伴って体サイズが多様化したことが明らかとなった。 次に、シロアリの巣に寄生する好白蟻性昆虫の進化と、シロアリの巣建設の進化の関係性について解析を行った。感染症数理モデルの解析から、単一の材を超えて採餌を行う行動の進化が、社会寄生の進化を促すことを示した。そして文献調査を通じて、99.6%の好白蟻性ハネカクシ種が採餌を行うシロアリ種に寄生することを確認し、系統種間比較から営巣性と社会寄生の密接な関係を明らかにした。 最後に、自然条件では地下トンネルの形成を行わない5種のKalotermitidaeのシロアリについて、その行動ポテンシャルを調べた。特に体サイズが大きい種で高い行動ポテンシャルがあることを発見し、その際の行動ルールが、祖先的でトンネルを行うKalotermitidieであるParaneotermes simplicicornisと類似していることを確認した。この観察過程で行動観察のための実験系の確立を行えたので、更に対象種を広げて本研究の計画を進める準備ができた。 以上の結果のいくつかは、すでに論文投稿を始めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍による当初の計画を実施できない状況を逆に利用して、巣建設と社会寄生の関係や、体サイズの進化など、新たな研究の方向性を生み出すことができた。これらの文献調査は全く予定になかったものであり、野外調査にいけないことを受けて発案したものであるが、当初の計画である建設行動の種間比較を進めるうえで、想定以上に有用な情報となった。 加えて、この間当初の計画も止まっていたわけではない。海外調査ができなかったため、計画していたシロアリ種の行動観察はできなかったものの、国内の種を用いて必要なデータを集めることはできている。実験系の確立という目標もおおむね達成されていると考える。 以上の点を総合的に判断した結果、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
行動観察のための実験設定を決めることができたので、これまで観察した種について、追加の動画を撮影し、行動解析を行う。また残りの国内で採取可能な種についても観察を行う。それ以上については、海外渡航制限の解除の進捗に応じて決めるが、国内種の情報だけで論文をまとめる、海外から生きたサンプルを提供してもらう、など柔軟に対応する。
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Research Products
(13 results)