2021 Fiscal Year Annual Research Report
新規固体電気化学測定系を用いた固固界面における電極反応機構の微視的解明
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21J00688
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
久米田 友明 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 電極触媒 / 単結晶 / 反応機構 / エネルギー変換 / 酸素還元反応 / 水電解 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は、室温でのアルカリ性溶液中におけるPt(111)単結晶電極上の酸素還元反応(ORR)の反応機構解析を実施した。プロトン源である水を重水に置換することによる速度論的同位体効果(KIE)を解析することで、反応における律速過程を解明した。支持電解質にはKOHおよびLiOHを用い、カチオン種による反応機構への影響を調査した。また、低温下における反応機構解析を行うための電気化学セルの設計を行った。 一般的に、Pt電極触媒におけるORRは、電極表面での酸素分子の吸着および反応を伴う内圏型電子/プロトン移動によって進行する。しかし、電位走査方向によって電極表面や界面の状態は異なり、それに伴うORR機構への影響は解明されていない。そこで本研究では電位走査方向と電解質カチオンの2つの因子からORR機構の解明を試みた。KIE解析の結果、低電位から高電位に走査した場合、カチオン種に依らずプロトン移動が律速過程であることが示された。高電位から低電位に走査した場合、KOH中では不可逆的なPt酸化物が形成され、電子移動が律速過程となることが示された。一方、LiOH中では可逆的な吸着OH種がPt表面で安定化され、プロトン移動が律速過程となることが示された。さらに、LiOH中では酸素分子の吸着を伴わない外圏型電子/プロトン移動が内圏型反応と並行して進行することが明らかとなった。Pt表面の吸着OH種の安定性がORR機構および選択性に影響すると考えられる。 本研究ではより幅広い温度範囲での反応機構解析を可能にするため、低温測定用の電気化学セルの設計を行った。液体窒素および窒素ガスフローによって低温域での温度制御を可能とした。開発したセルを用い、濃厚過塩素酸電解液中におけるPt(111)電極上のHER測定を行った。電解液温度を室温から-100℃の範囲で制御し、温度に依存した反応速度の観測に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
単結晶電極の作製環境を整備し、実際に作製したPt(111)電極を用いて未知の電極反応機構の解明に成功した。当該研究成果はプレプリントサーバー上で公開され(https://doi.org/10.48550/arXiv.2205.00719)、学術誌にも投稿されている。今後は、Pt(100)やAu(111)などの他の表面構造や金属種へと展開することで新たな成果が期待される。また、当初の予定通り低温電気化学用のセルを設計し、実際に室温から-100℃の範囲で温度制御を行いながら電気化学測定を実施した。室温での研究によって得られた知見をもとに、幅広い温度域における電気化学測定を行うことで電極反応機構に関する新たな発見が期待される。また、赤外分光測定の準備も進んでおり、今後は電極-電解質界面の化学種の直接観測も可能となる。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度実施したPt単結晶電極上の反応機構解析に引き続き、Au単結晶電極上の酸素還元反応(ORR)および水素発生反応(HER)の反応機構解析を行う。重水を用いた速度論的同位体効果(KIE)の解析により、電極反応における律速過程およびプロトン移動機構を解明する。電気化学測定にはカチオン種の異なる電解液または表面構造の異なる単結晶電極を用い、それらの反応機構への影響を調査する。また、赤外分光法を用いて電極/電解液界面の水分子の構造を明らかにし、界面構造と反応機構との相関を解明する。 次に、昨年度設計した低温電気化学測定セルを用い、実際に低温下におけるPt単結晶電極上のHER機構を解析する。電解液には十分に低い液抵抗値を得るため、高濃度の過塩素酸または水酸化カリウムを使用する。液体窒素および窒素ガスフローにより電解液温度を室温から-150℃の範囲で制御する。軽水および重水溶媒中で測定した反応速度からKIE解析を行い、反応温度が反応機構に与える影響を解明する。
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Research Products
(3 results)