2022 Fiscal Year Research-status Report
Experimental Investigation of Mechanical Properties and Deformation Behavior of Human Cadaver Spine through Japan-Thailand Collaboration
Project/Area Number |
22KK0051
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
稲葉 忠司 三重大学, 工学研究科, 教授 (70273349)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬場 創太郎 三重大学, 工学研究科, 助教 (10839674)
加藤 貴也 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 准教授 (40422878)
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Project Period (FY) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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Keywords | 脊椎運動 / 力学特性 / 6軸材料試験機 / 日本-タイ連携 / ヒト屍体脊椎 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の特色は,医工連携および日本-タイの国際連携によって,アジア人の脊椎疾患治療分野にイノベーションを創出させることである.脊椎の力学的評価に関する知見と実績を有する三重大学と十分なヒト屍体が使用できるコンケン大学が強く連携し,アジア人屍体脊椎に対する力学特性および変形挙動解析を行い,力学的根拠に基づいた定量的・客観的脊椎疾患治療の確立に資するための研究を推進させる. 研究代表者らはこれまで,医工が連携して,脊椎強度を測定するための6軸材料試験機の開発および開発した試験機を活用した脊椎の力学特性や変形挙動の評価を精力的に行ってきた.しかし,国内ではヒト屍体脊椎の入手が困難な状況であり,臨床上重要とされるヒト脊椎を対象とした系統的な調査は推進できていない.さらに,この分野の研究は欧米中心に発展した経緯から,アジア系人種の脊椎に関して未だ実験的に未解明なパラメータも多く,その結果,欧米人と体格の異なるアジア人用の脊椎疾患治療用体内固定具の開発は十分でない.一方,本学協定校であるタイ・コンケン大学医学部では,多数の試験体用ヒト屍体を確保することができる.よって,両大学が連携してアジア人屍体脊椎を用いた調査を実施し,脊椎の力学特性や変形挙動を明らかにすることは,生物学的に新しい知見を得るだけでなく,脊椎疾患の治療や手術手技の評価に対して極めて有用である. 上述の目的を達成するため,本研究では,コンケン大学にて力学試験用ヒト屍体脊椎を入手し,正常,損傷,脊椎固定治療等の試験体モデルを作製し,単純負荷および曲げや回旋等の身体運動を想定した6自由度力学試験を実施する.本年度は,この力学試験に用いる脊椎強度測定用6軸材料試験機を日本からタイへと輸送するとともに,研究代表者,研究分担者および研究協力者がコンケン大学へ渡航し,セッティングおよび動作確認を実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
身体運動の軸機関および支持機関である脊椎の疾患に対する診断・治療において,脊椎の剛性を把握することは,適切な治療方針・手術手技を決定する上で極めて重要である.そこで本研究では,脊椎の剛性を力学的観点より客観的・定量的に評価することを目的とし,複雑な脊椎変形挙動を6軸材料試験機を用いて実験的に調査する.この6軸材料試験機については,三重大学からコンケン大学に移設する.コンケン大学にて,力学試験用ヒト屍体脊椎を入手し,正常,損傷(椎間板損傷,靭帯損傷,椎間関節損傷など),脊椎固定治療(脊椎インプラント装着,椎体間ケージ挿入など)等の試験体モデルを作製し,単純負荷および曲げや回旋等の身体運動を想定した6自由度力学試験を実施する.試験体モデルの作製および力学試験の実験条件,取得するデータの内容などは,研究代表者らが過去に行った動物屍体脊椎を用いた国内での力学試験を基に検討・設定する.2回/年の渡航を目標とする.この際渡航するメンバーは,研究代表者,研究分担者,および研究協力者(研究代表者の研究室に所属の工学研究科大学院生)とし,海外共同研究機関であるコンケン大学医学部整形外科の医師らと連携して実験を実施する. 22年度は,力学試験に用いる脊椎強度測定用6軸材料試験機を日本からタイへと輸送した.また,8月には研究代表者,研究分担者2名および研究協力者3名が,3月には研究分担者1名がコンケン大学へ渡航し,移設した試験機のセッティングおよび試験体固定方法等の実験手法の整備を実施した.さらに,ヒト屍体単椎間(機能的脊椎単位,FSU)を用いた正常,損傷,脊椎固定治療など各種モデルに対する基礎的な力学試験(引張,圧縮,ねじりなどの単純負荷試験)を実施した.よって,「おおむね順調に進展している」と判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,日本-タイの国際連携により,ヒト屍体脊椎の剛性を力学的観点より客観的・定量的に評価することを目的とし,複雑な脊椎変形挙動を6軸材料試験機を用いて実験的に調査する.本科研費申請期間の実施計画は以下の通りであり,今後もこの計画に基づき研究を推進する. 【22年度】ヒト屍体FSUに対する単純負荷試験を実施する.(1)コンケン大学に移設した6軸材料試験機のセッティング・試験体固定方法の確立,(2)ヒト屍体脊椎試験に対する各種実験条件(最大負荷値,負荷速度など)の検討,(3)正常,損傷,脊椎固定治療など各種モデルに対する基礎的な力学試験(引張,圧縮,ねじりなどの単純負荷試験)の実施,(4)数値シミュレーションのための脊椎構成要素の数理モデルの構築 【23年度】ヒト屍体FSUに対する6自由度力学試験を実施する.(1)ヒト屍体FSUに対する身体運動を想定した6自由度力学試験の実験方法確立,(2)正常,損傷,脊椎固定治療など各種FSUモデルに対する6自由度力学試験(前屈,後屈,側屈,回旋など)の実施,(3)構築した数理モデルの有限要素法への組み込みおよび数値解析の実施 【24年度】ヒト屍体多椎間に対する6自由度力学試験を実施する.(1)ヒト屍体多椎間に対する身体運動を想定した6自由度力学試験の実験方法確立,(2)正常,損傷,脊椎固定治療など各種多椎間モデルに対する6自由度力学試験(前屈,後屈,側屈,回旋など)の実施,(3)各種負荷条件および各種脊椎モデルにおける有限要素解析の実施および実験結果との比較による数値解析結果の検証 【25年度】ヒト屍体脊椎に対する力学試験の追加データを取得する.(1)ヒト屍体脊椎に対する各種(単純,6自由度)力学試験の実施,(2)構築したシミュレーションを活用したアジア人向け脊椎インプラントの開発,(3)アジア人屍体脊椎の力学特性および変形挙動解析のまとめ
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Causes of Carryover |
6軸材料試験機を移設したコンケン大学整形外科棟のフロア改修工事により,2022年度3月渡航時に現地での力学試験が困難となったため,3月は研究分担者が単独で渡航し,コンケン大学側研究者との研究打ち合わせを実施した.よって,当初同行予定であった研究協力者の渡航費用が不要となったため,次年度使用額が発生した.この次年度使用額については,当初の使用計画に基づき,2023年度の渡航費用に充当する予定である.
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Research Products
(5 results)