2023 Fiscal Year Research-status Report
Role of virus persistent infection on enhancement of environmental adaptability in host plants
Project/Area Number |
22KK0081
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 英樹 東北大学, 農学研究科, 教授 (20197164)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田原 緑 立命館大学, 立命館グローバル・イノベーション研究機構, 助教 (20849525)
宮下 脩平 東北大学, 農学研究科, 助教 (60556710)
|
Project Period (FY) |
2022-10-07 – 2026-03-31
|
Keywords | キュウリモザイクウイルス / 不顕性感染 / ハクサンハタザオ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、様々な生物の全ゲノム塩基配列情報とバイローム解析により、宿主生物のゲノム上にウイルスゲノムと相同の塩基配列が存在したり、宿主植物に潜在・不顕性感染しているウイルスが予想以上に多いという事実から、宿主生物は、進化の過程でウイルスの感染を繰り返し受けてきたことが明らかになってきた。しかし、これまでのウイルス研究は、生物に病気を起こす病原体としてのウイルスに焦点があてられており、病気を起こすことなく宿主生物に感染しているウイルスの存在や宿主生物との相互関係については、十分な研究がなされていない。モデル植物であるシロイヌナズナは、一年生植物であり、日本では稀にしか見られない。一方、シロイヌナズナに近縁の多年生植物(宿根草)であるハクサンハタザオは、一度ウイルスが感染を受けるとウイルスを保持し続けることに着目し、申請者らは、ハクサンハタザオから単離したキュウリモザイクウイルス(CMV)の性状解析と宿主遺伝子発現に与える影響について解析を進めてきた。本年度の国際共同研究では、日本とヨーロッパに自生するハクサンハタザオに感染しているウイルスを徹底的に比較解析するためドイツのバイロイド大学近郊のハクサンハタザオ自生地において2023年5月初旬にサンプリングを実施した。免疫学的な手法により、約50個体のCMV感染陽性個体を単離した。さらに、サンプリングの後、共同研究先であるオランダ・ワーゲニンゲン大学のRichard Kormelink博士の研究室にて、取得サンプルからのCMVゲノムクローンの単離と今後の具体的な研究計画に関する議論を行なった。さらに、モデルケースとして日本産CMVのゲノムcDNAの合成と試験管内転写ベクターを構築済みであることから、ヨーロッパで取得したサンプリングから、RT-PCRにより、CMVcDNA増幅とクローニングを進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年5月初旬に、ヨーロッパの山岳地帯に自生するハクサンハタザオのサンプリングを行った。免疫学的手法により、CMV感染候補個体をスクリーニングすることができたことから、研究は概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
ヨーロッパの山岳地帯に自生するハクサンハタザオから免疫学的な手法によりスクリーニングしたCMV感染候補個体から全RNAを抽出し、CMVのゲノムRNAに特異的なプライマーを用いたRT-PCRにより、cDNA増幅、クローニング、塩基配列の決定を行う。さらに得られた塩基配列を、日本に自生するハクサンハタザオから単離したCMVのゲノムRNAの塩基配列と比較し、分子系統分類を行う。
|
Causes of Carryover |
ヨーロッパで採取したハクサンハタザオサンプル全てからRNAを抽出することが完了したが、そのRNAを鋳型としたCMVのcDNA合成が、全てのサンプルで完了したわけではなく、一部翌年度に作業をすることになったため、次年度使用額が生じた。
|