2022 Fiscal Year Research-status Report
宿主RNAメチルトランスフェラーゼを標的とした抗インフルエンザウイルス薬の探索
Project/Area Number |
22KK0094
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
五十嵐 学 北海道大学, 人獣共通感染症国際共同研究所, 准教授 (10374240)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松野 啓太 北海道大学, 人獣共通感染症国際共同研究所, 准教授 (40753306)
日尾野 隆大 北海道大学, 獣医学研究院, 講師 (00775819)
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Project Period (FY) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / 抗ウイルス薬 / RNAメチル基転移酵素 / 宿主因子 / 計算創薬 / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルス等の分節型マイナス鎖RNAウイルスの多くは、増殖の際、感染宿主のmRNAからキャップ構造と短鎖RNAを盗み取って、自身のウイルスmRNAの合成を開始する(キャップスナッチング)。ごく最近、インフルエンザウイルスのキャップスナッチングには、宿主細胞のRNAメチル基転移酵素MTr1が関与していることが報告された。 はじめに、本研究では、MTr1ノックアウト細胞を作製し、インフルエンザウイルスを含む種々のキャップスナッチングウイルスの複製能を調べた。その結果、インフルエンザウイルスの複製には、MTr1が必須であることが分かった。 続いて、MTr1阻害化合物を探索するため、MTr1の立体構造情報と計算機を活用し、既存薬ライブラリー(5,597化合物)のスクリーニングを実施した。結果、MTr1の酵素活性を阻害し、かつ種々のインフルエンザウイルスに対して抗ウイルス活性を示す化合物として、天然化合物ツベルシジンを見出した。さらに115種類のツベルシジン誘導体の中からツベルシジンより毒性の低い化合物を探索し、最終的に抗インフルエンザウイルス活性を示す最も効果的なMTr1阻害化合物として、トリフルオロメチルツベルシジン(TFMT)を同定した。 また計算機構造解析から:(1)TFMTは宿主MTr1と結合することでキャップ構造の修飾機能を阻害する。(2)MTr1で修飾されない宿主mRNAのキャップ構造はウイルスのRNAポリメラーゼとの相互作用が減弱する。(3)結果としてTFMTはRNAポリメラーゼを介したキャップスナッチングとその後のウイルスRNAの合成を抑制する。という作用機序が予想された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)今年度MTr1を標的に実施した大規模バーチャルスクリーニング(約700万化合物、ナミキ商事提供)の結果から、実験で評価する化合物をケモインフォマティクスや機械学習等の手法により計算機上で絞り込む。 (2)計算機で選抜された化合物の抗ウイルス効果を、培養細胞を用いて調べる。活性化合物に対しては、細胞毒性を評価する。 (3)種々のウイルスのmRNA転写に関わるタンパク質とレポータータンパク質のみを培養細胞で発現させるアッセイ系(ミニゲノム系)を日本国内で作製し、ボン大学でスクリーニングパッケージに適合させる。ボン大学のスクリーニングパッケージ(MTr1ノックアウト細胞、メチルトランスフェラーゼアッセイ等)を用いて、(2)で抗ウイルス活性を有した化合物の中から、MTr1を標的にしている化合物を選別する。また、MTr1ではなく、宿主の他のメチルトランスフェラーゼ(CAPAMやMTr2)を標的にしている可能性についても調べる。
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Causes of Carryover |
当初計画していた海外渡航の予定を次年度に延期したため。
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Research Products
(3 results)