2022 Fiscal Year Research-status Report
Joint research between Japan and South Korea to explore the essence of the unique reproductive ecology of giant water bugs
Project/Area Number |
22KK0103
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
東城 幸治 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (30377618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹中 將起 信州大学, 理学部, 特任助教 (00854465)
関根 一希 立正大学, 地球環境科学部, 専任講師 (10779698)
谷野 宏樹 基礎生物学研究所, 進化発生研究部門, 特別研究員 (10915242)
鈴木 智也 京都大学, 地球環境学堂, 特定研究員 (30739503)
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Project Period (FY) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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Keywords | 昆虫 / 繁殖戦略 / 父育 / 遺伝 / 進化生態 / 行動 / 適応度 / 逆分散 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、卓越した種多様性や多様な繁殖システムを進化させてきた昆虫の中でも,オスが卵塊を自身で背負って保護(父育)するコオイムシに着目し、その系統や進化的な背景も含めて、ユニークな繁殖生態を獲得するに至った背景を詳細に理解することを目的としている。東アジア広域に生息するコオイムシには、遺伝的に大きく分化した3系統群(日本列島内に2系統、朝鮮半島を含む大陸に1系統)が存在し、これまでの系統進化研究では、日本列島のコオイムシが側系統群と評価され、日本列島から大陸への「逆分散 Back Dispersal」が示唆されてきた。 2022年度には、ゲノムワイドなSNPs解析(GRAS-Di解析)における解析サンプル数を増やし、より頑健な系統進化史解析へと着手した。現在、次世代シーケンサーにより得られた解析結果について、詳細な分析を進めているところである。
また、コオイムシが背に卵塊を背負って父育する行動が、世代交代において不可欠であることを再検証する実験にも着手した。また、オスの背から剥離した卵塊の発生状況や、卵塊剥離が起こる条件(負荷の強度)を計測するような新規実験に着手した。卵内の胚の発生段階により、卵の付着力が変化する可能性についても物理的に負荷をかけて固着力を計測する検証実験に着手した。 また、卵塊における各卵の付着力そのもの計測については、韓国との共同研究として展開を予定しており、今シーズン以降の取り組みについて打ち合わせを進めてきた。韓国・崇実大學・Park博士の協力のもと、卵塊を保護するニットシース nit sheathとして硬化するタンパク質の分析技術(nitのフーリエ変換赤外分光法)や接着力の計測実験などを展開する計画で準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、時間的にも限られた状況であったが、解析対象となるコオイムシの各地域個体群について、系統進化学的な位置づけを明確にすることを目的とした遺伝子解析を実施した。ミトコンドリアDNAと核DNAの各々に複数の遺伝子領域の解析に加え、ゲノムワイドなSNPs解析(GRAS-Di解析)を実施してきた。これにより、コオイムシ種内の系統進化に関する頑健な知見が得られつつある。今後の、繁殖生態や行動(特に、父育との関係性)に関する議論を行っていく上での重要な基盤的知見となる。
また、父育に不可欠である、オス背への卵塊の付着、胚発生が終了した後の好都合的なタイミングでの剥離な度に関する、物理学的なシステム、生化学的なシステム、遺伝学的システムについての解明を目指す上で、韓国との共同研究は不可欠であるが、韓国側の代表研究者であるBae教授(高麗大學)とは、2022年12月にタイ・チェンマイで開催された国際学会に共に参加し、代表者の東城をはじめ、分担者の谷野・竹中が直接対面する形で、学会会期中に計画についての打ち合わせを実施することができた。研究が本格化する2023年には、韓国を訪問し、現地研究室での共同研究体制の立ち上げを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度から実施している、コオイムシ種内の3遺伝系統群を含み、それぞれの地域個体群を網羅するようなサンプルを対象とした、ミトコンドリアDNAと核DNAの各々複数領域の遺伝子解析に基づく系統解析、並びにゲノムワイドなSNPs解析(GRAS-Di解析)の結果を整理し、コオイムシの系統進化史に関する理解を頑健なものとする。特に、日本列島から大陸への「逆分散(Back Dispersal)」現象についての精査を進める。こうした系統進化史の知見を基盤として、繁殖生態の研究に用いる日本列島と朝鮮半島の個体群を確定させる。以下、コオイムシのユニークな繁殖生態に関する実験については、遺伝的に分化した3系統群(うち1系統は朝鮮半島の系統)を対象に、個体群間の比較も行いながら実施する。
繁殖生態に関する研究としては、コオイムシが背に卵塊を背負って父育する行動が、世代交代において不可欠であることを再検証する。既に、着手しているが、剥離する胚発生ステージを明確に識別させながら、統計解析が可能となる反復数での実験を行う。また、オスの背から剥離した卵塊の発生状況や、卵塊剥離が起こる条件(負荷の強度)を引っ張り強度の計測機器を用いて評価する。卵内の胚の発生段階により、卵の付着力が変化する可能性についても実験的に検証する。
また、卵塊における各卵の付着力そのもの計測については、韓国との共同研究として韓国内で、崇実大學・Park博士の協力のもとに実施する。加えて、Park博士との共同研究として、卵塊を保護するニットシース nit sheathとして硬化するタンパク質の分析(nitのフーリエ変換赤外分光法)などを実施する予定である。
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