2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22KK0115
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
高松 由基 長崎大学, 熱帯医学研究所, 准教授 (00750407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 岳志 京都大学, 医生物学研究所, 教授 (00422410)
BALINGIT Jean・Claude・Palma 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (40968723)
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Project Period (FY) |
2022-10-07 – 2026-03-31
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Keywords | エボラウイルス / ヌクレオカプシド / ヌクレオカプシド様構造 / 微細構造解析 / 動態解析 / クライオ電子顕微鏡 / ライブセルイメージ顕微鏡 / BSL-4 |
Outline of Annual Research Achievements |
エボラウイルスとマールブルグウイルスに代表されるフィロウイルスは、一類感染症に属しバイオセーフティレベル-4(BSL-4)に分類されるため、物理的な封じ込め設備及び機器が必要である。治療法は確立しておらず、重篤な出血熱症状と高い致死率を示す最も重要な新興感染症の一つである。そこで我々はドイツ国のBSL-4研究グループと共同して、フィロウイルスの形成機序(ヌクレオカプシド:NCの形成・輸送過程を含む)を分子レベルで解明することで、ウイルス複製阻害薬開発に貢献したいと考えた。本国際共同研究グループは、これまで10年以上にわたる共同研究の歴史があり、その中で、フィロウイルスの複製機序や構造解析に関わる先駆的な研究成果を輩出してきた。この研究を更に発展させるべく、本研究ではi) 前駆研究で構築したウイルスタンパク質複合体に対する高分解能顕微鏡解析、ii) ドイツ国のBSL-4施設で行う感染性ウイルス検体を用いた解析の二つのプロジェクトに取り組み、これまで解かれていないNCの形成機構を近原子分解能で解明することを目指す。 NCはウイルスRNA複製の足場であり、その構造を理解することは抗ウイルス薬開発に直接的に貢献することが期待される。これまで生化学的なアプローチで、単独タンパク質レベルおよび単独タンパク質間の相互作用に関する研究が進められてきた。一方でフィロウイルスNC複合体の構造解析については研究が進んでおらず、微細構造やタンパク質間相互作用については不明な点が多い。本研究では、本邦では行うことができないウイルス検体を用いた構造・分子機構解析に、構造解析・動態解析のスペシャリストが挑む。本邦でウイルス様粒子およびNC様構造を用いて、基礎情報を得るとともに実験条件を最適化し、ドイツ国でウイルス粒子を用いた構造解析に応用する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者は前駆研究でEBOVのNCLS形成・輸送機構が、タンパク質発現系を用いた非感染性ライブセルイメージンングシステムで再現できることを示した。このシステムを用いてヌクレオカプシド様構造(NCLS)の形成・輸送は、3つのウイルスタンパク質で制御されることを解明した。またNCLSを構成する3つのウイルスタンパク質 (ヌクレオプロテインNP, VP24, VP35)について、どのドメインがNCの形成・輸送機能を制御するか解析した。これまでにVP24タンパク質のYxxLモチーフがNC形成・輸送に関わることを明らかにした。続いて、NP, VP35のNCLS形成・輸送制御領域の同定を進めた。NPは739個のアミノ酸から構成され、NP1-450がオリゴマー形成に重要であることから、タンパク質結合領域とされるC末領域の欠損変異体シリーズを構築した。同様にVP35についてもN末欠損変異体及びC末欠損変異体を作成し、NCLSの形成・輸送機能を評価した。 ヌクレオカプシドは、RNAのほかにNP, VP24, VP30, VP35, Lの5つのウイルスタンパク質で形成される。研究代表者の研究により、VP30はNCLS形成には関与しないが、NCLS周囲を取り囲むように局在すること、VP30-NP間相互作用によりVP30がNCLSに結合することが示唆された。従って、NCLS形成解析の際にVP30を加えることで、構造が安定する可能性が示唆された。 構造解析については、既報であったEBOVのNP-RNA構造に加えて、マールブルグウイルスのNP-RNA構造を近原子分解能で解明し報告した。またNP-NP結合領域およびNP-RNA結合領域を同定し、各ウイルスの転写・複製を制御するアミノ酸を同定した。 以上のように、構造解析・動態解析についてある程度の進捗を認めたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度構築したNP変異体及びVP35変異体を用いて、細胞内で安定な最小限のNC様構造のオリエンテーションを決定する。また、それらの変異体を含むNC様構造およびウイルス様粒子(VLP)を微細構造解析に供するための精製作業を最適化する。これまで種々の密度勾配法を試したが、精製過程におけるロスが多く、最終産物の量が不十分であった。そこで地道にVLPを備蓄し、これまでの100倍量のスケールで精製作業を進める準備を進めた。これらのストック検体について、まずは小スケールで精製効率を確かめて、一番効率が良い手法を用いて、大規模な精製プロトコルを進める方針である。 また、構築した各変異体の転写・複製機能を評価するためにミニゲノムアッセイ法(レプリコンにレポーター遺伝子を導入することで転写・複製活性を評価する)で確かめる。さらにNCLSタンパク質の組み合わせについて、各タンパク質の細胞内局在を蛍光抗体法で、タンパク質間の相互作用を免疫沈降法で評価する。 国際共同研究としては、当研究室及び野田研究室で日程調整し渡独し、Becker研究室におけるウイルス検体を用いた共同研究を進める。具体的には、Becker研究室で申請者が構築した組換えウイルス(蛍光融合タンパク質発現ウイルスなど)を用いた解析などBSL-4実験施設を用いる研究計画について打ち合わせを行う。また次年度以降は、本邦で確立する密度勾配遠心分画法を用いたウイルスNCの精製を目指し、誰がいつBSL-4内でウイルス粒子を用いた実験を行うか研究計画を立案し共有する。これまでの研究ではウイルスを用いた検証はできていなかったため、本研究によりウイルス検体を用いて微細構造解析を進めることが期待される。
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[Presentation] Chikungunya virus infection in blood donors and patients during outbreak, Mandalay, Myanmar, 2019.2022
Author(s)
Mya Myat Ngwe Tun, Aung Kyaw Kyaw, Takeshi Nabeshima, Khine Mya Nwe, shingo Inoue, Basu Dev Pandey, Yuki Takamatsu, Kyaw Zin Thant, Kouichi Morita.
Organizer
第56回日本脳炎ウイルス生態学研究会
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[Presentation] Structural basis of Marburg virus helical nucleoprotein-RNA complex formation.2022
Author(s)
Yoko Fujita-Fujiharu, Yukihiko Sugita, Yuki Takamatsu, Kazuya Houri, Manabu Igarashi, Yukiko Muramoto, Masahiro Nakano, Yugo Tsunoda, Ichiro Taniguch, Stephan Becker, Takeshi Noda
Organizer
17th International Symposium of The Institute Network, Kanazawa. October 14, 2022 (Poster)
Int'l Joint Research
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