2022 Fiscal Year Research-status Report
Joint international project to establish antisense oligonucleotide therapy for treating Dentatorubral-Pallidoluysian Atrophy (DRPLA)
Project/Area Number |
22KK0121
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
中山 東城 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特任准教授 (40613302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東 美和 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 特任助教 (30898185)
吉岡 耕太郎 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, プロジェクト助教 (70780641)
横田 隆徳 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (90231688)
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Project Period (FY) |
2022-10-07 – 2025-03-31
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Keywords | 核酸医薬 / 脊髄小脳変性症 / 歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリグルタミン病の1つである歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症 (DRPLA)は、臨床遺伝学的に原因遺伝子のATN1遺伝子内のCAGリピート数と疾患重症度が相関することから、ポリグルタミン鎖の異常伸長したATN1蛋白質を核酸医薬を用いて減少させることは理にかなった治療方針であると考えられている。一方でマウスモデル等の研究から、ATN1は正常な脳発達において必要不可欠とも考えられている。DRPLAのような神経疾患では、神経機能異常・神経脱落前からの早期の治療介入が重要であるが、ATN1の本来の機能的役割を障害しない、すなわち正常脳発達を妨げないATN1遺伝子抑制介入の最適タイミングはいつなのかについて検討することはDRPLAの治療戦略を考える上で重要である。そこで本研究では、共同研究先である米国の研究者らとともに、日本に最も罹患者の多い脊髄小脳変性症であるDRPLAのさらなる分子病態の解明を行うとともに、アンチセンスオリゴを使った核酸医薬治療のための基礎研究を行うこととした。
DRPLA疾患特異的分子病態を明らかにするため、DRPLA患者から樹立したiPS細胞から神経細胞を作成し、ポリグルタミン鎖の異常伸長が、細胞生存や、神経細胞の興奮にどのように影響するかを調べた。その結果、DRPLA患者iPS細胞では正常iPS細胞に比べて、細胞の恒常性機能に関わるオートファジー機能の指標であるp62蛋白が蓄積し、オートファジー機能不全が示唆された。同時に同じ患者iPS細胞由来の神経細胞を用いてASO配列の探索を行い、約400種類の候補配列から、ATN1遺伝子発現を90%以上抑制する配列領域を同定し、6種類の治療薬候補配列を同定した。また、候補ASOの一つを用いることにより、患者iPS細胞で認められたp62沈着が減少する傾向があることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、DRPLAの治療戦略に焦点を当てた病態解明と、疾患マウスモデルを用いた最終核酸治療薬の同定の課題に向けて、①DRPLA患者iPSC由来の神経細胞を用いた疾患特異的な分子病態の同定と候補ASOの治療効果の検証、②我々独自技術であるヘテロ2本鎖核酸(HDO)技術を用いたASO治療候補薬の導出を行う計画である。 本計画では疾患モデル細胞の樹立と候補核酸医薬をスクリーニングが研究の中で最初の重要な鍵となるが、この最初の関門をクリアできる見通しが立ち始めている。 また本研究では、分担研究者が共同研究先であるボストン小児病院に出向し、課題研究の一部を行う計画であるが、分担研究者はほぼ予定通り米国ボストン小児病院に出向できており、次年度以降の研究を進める計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞モデルによる病態解明をさらに進めるため、研究計画に基づいて患者iPS細胞由来の神経細胞を用いた詳細な病態解明を進める。本研究では、神経前駆細胞を経て約4週で成熟神経細胞に分化するNGN2遺伝子誘導神経分化プロトコールを用いているが、この安定した分化プロトコールの利点を生かし、ASO投与時期を分化前(iPS細胞)から分化後(成熟神経細胞)の複数のタイミングで試し、ATN1発現抑制が細胞の機能変化にどのように関連するのかについて検討する。 また、候補ASOに様々な相補鎖を組み込んだヘテロ2本鎖核酸(HDO)を野生型マウスに脳室内投与し、第一段階である生存率、並びに行動毒性スコアリング(Acute tolerability scoring system; ATSS)を用いた急性毒性モニタリングを行う計画である。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では若手分担研究者が令和4年度中に国際共同研究機関先である米国ボストン小児病院に出向する計画であったが、分担研究者の諸事情により渡米が令和5年度になり、令和4年度に計上していた渡航費用等を令和5年度に繰り越す事になった。渡航は令和5年5月に完了し、当該助成金を用いて共同研究先での研究を行う予定である。
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