2023 Fiscal Year Research-status Report
Reconstructing the concept of occupation and testing its performance in empirical research: With a focus on the R.K. Merton archive
Project/Area Number |
22KK0213
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
武岡 暢 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (90783374)
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Project Period (FY) |
2023 – 2024
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Keywords | ロバート・K・マートン / アスピレーション / 職業 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会学者ロバート・K・マートンの遺した手稿、研究メモ、書簡、講義資料等の膨大なアーカイブを探索することが本研究の目的のひとつである。コロンビア大学図書館内にあるアーカイブは他の図書館への資料の移送や複写を受け付けておらず、実際に足を運んで目視で資料を確認する必要がある(その場での写真撮影は可)。本研究ではアーカイブ全体のなかでも特に大量の資料が残されている、マンハッタンヴィル地域でのアスピレーション調査を主な対象として設定している。当該年度は、まずマートンのアスピレーション調査が依拠していた「社会構造とアノミー」論文について、その成立や改稿の記録、関連する講義資料の捜索を実施した。マートンは論文化の以前に授業等でアイディアをかなり練り上げてから執筆することが多かったと言われており、論文には盛り込まれなかった先行研究や、関連する文脈などについて幅広く調査することは、結局公刊されなかったアスピレーション調査の位置づけにとって重要である。これまでのところアスピレーション調査との直接の関連を示すような資料には出会えていないが、書簡などからは応用社会調査局としてどのような体制で調査を受託していたのか、その様子が明らかになりつつある。ラザーズフェルドはその経営者的手腕によって企業等からの調査委託を旺盛に引き受けていた。そのなかではロックフェラー財団からの支援も受けており、マートンの調査もこれに連なるものであった。こうした雰囲気のなかに参加してきたのが人口学者キングスレー・デービスであり、デービスはマートンとコロンビアへの転籍以前から親しく書簡を交わしており、しかも単なる社交に留まらず、重要な研究上の議論を書簡上で展開していたことが今回の調査で明らかになった。デービスについてはコロンビア大学の資料目録に「マンハッタンヴィル調査」の項目がみられるが、公開されていない(理由は不明)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ、定期的にアーカイブに足を運び、資料を継続的に探索できている。結果として、まとまった量の資料を探索することができているが、細かい手稿の読解は、マートンの悪筆により難航している。また、アーカイブ調査の性質上致し方ないとは言え、本研究課題との関連性の高い資料にはなかなか出会えていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまではアスピレーション調査に携わった関係者の名前から、関連する資料を網羅的に捜索する手法を主に採用してきたが、今後はマートンの研究関心に関連して、アスピレーション調査の典拠のひとつである「社会構造とアノミー」論文の書誌学的調査や、当該論文でアスピレーション概念について参照されている当時の社会心理学的研究の調査などを進めていくことで、本研究課題の本願である「職業」概念の再構築にとって重要な知見が得られるものと考えられる。というのも、社会学の職業概念に欠落している要素の一部は、当時の社会心理学から現代の産業心理学に至る、心理学系の研究蓄積のなかに継承されていると考えられるためである。
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